「よし、とりあえず名義人は確保できたな」
久恵がそう言って腰を降ろした瞬間、千春がボソッと言った。
「そう言えばさ、
久恵の爺様、小学校の近くで町工場やってたよな。
釘か何か作る鉄工所」
「ん?
ああ、けっこう前に廃業したよ、腰がイテーとか言って。
昔よく、学校帰りに寄ったよな」
「あそこってさ、今はどうなってんの?」
「……。」
次の瞬間、
久恵は再び立ち上がり、勢い良く窓を開けた。
「爺ちゃん!!」
「ほんでな、高坊が芋に塩ふるとウメーってんで、わすらもマネすて皮ごとガブリって…」
「まだ喋ってたの!?
つーか爺ちゃん!あそこ今はどうなってんの!
爺ちゃんの町工場!!」
「鉄工所け?
どうもこうも、はずめは売りにでも出そうかと思ったけんど、依託業者に依頼しようにも、買い手が付くまで管理してもらうのにも金さかかるってんで、
ほんなら、久恵が婿を貰った時にでも、土地ごと婿さやって、二人で仲良く自営業でも開業すればええなって思ってそのままにしてるけんど」
「そのまま!?
つまり、工場の中は自由に使えるって事!?」
「そりゃまあ、ワシの土地じゃから使えるけんど」
「……。」
久恵は私達に振り返り、ニヤッと笑った。



