久恵の声に振り返ったお爺さんが、のらりくらりと窓の方へと歩いてきた。
「あんだすぺ?」
「友達にバイクもらったんだけどさ、爺ちゃんの名義にしたいんだけど、いい?」
「バイクけ?
免許取るんっすぺか?」
「そうそう。
免許取るまででいいからさ、爺ちゃんの名義貸してよ」
「ほっだら事ならいいさけんど、バイク乗んなら髪さ切ってからにすろよ。
巻き込まれんど、そんなケツまで伸ばすてたら」
「あーはいはい、わかったわかった。
じゃあ後で書類受け取ったら渡すから、名義変更お願いね」
「ちゃんとバッツラ切るんだど?
婆さんだで、むかすはみずかくて、そらあ、めんこかったんだど。
近所でも小野小町とか言われてな、三丁目の高坊いっぺ?あいづとわすで○×※*△□◎×」
「……。」
久恵は無言で窓を閉めるが、お爺さんは窓が閉まってからも喋り続けていた。



