一つ目は、小学五年生のときだった。
給食のあとの昼休み。
私は暇を持て余してベランダに乗り出して中庭で遊んでいる子どもたちを眺めていた。
四月にクラス替えがあって新しいクラスになったが、私は人見知りなので、知らない子に話しかける勇気はなく。
そして、今に至る。
唯一話せる相手は、幼稚園からの幼なじみの男の子、唐松 蒼生(からまつ あおい)だけだった。
基本的に、休憩時間と移動時間は一人で過ごしている。話し相手がほしいときはあるが、そのときは蒼生と話すから、寂しくはない。
女子のグループ内でのいざこざに巻き込まれることもないから、気楽だ。
いつも昼休憩は図書室かベランダへ行く。
今日は晴天で太陽の光がぽかぽかと暖かそうだったから、ひなたぼっこをしに、ベランダに出てきた。
案の定、暖かかった。
ベランダの銀色の手すりに視線を向けると、反転した蒼生の口角が上がった顔が映っていた。
怖くなり、急いで教室に駆け戻った。