「私のこと、雛夏って呼んでくれるのは世那くんだけだから、本当に嬉しいよ」
それまで男たちの会話をニコニコとしながら聞いていたひなちゃんが、嬉しそうに微笑みながら世那を見上げた。
世那の眉間の皺がすうっと消える。目を見張らせたまま「……」と固まる世那は、照れ隠しなのか右手で口元を覆った。
「「「やべえ……」」」
あんなに騒がしかった三人は揃いも揃って語彙力を失くし、机に顔を埋め始めた。ひなちゃんの眩しさにやられたらしい。
「天使すぎる」
項垂れている佐野がぽつりと溢した言葉に心の中で同意する。
ひなちゃんは見た目もさながら、心がとても綺麗な子だと思う。 穢れや醜さを持ち合わせていない澄んだ心の持ち主。
これまで女子に全く興味のなかったあの世那が好きになるだけある。世那も見る目があるし、ひなちゃんも見る目がある。
「そろそろ俺らは行くよ」
バスケのこと以外無気力無関心だった世那が "嫉妬" という感情を全面に出す姿は、何度見ても新鮮で、何度見ても面白い。
デレデレとハートの目を向ける3人からひなちゃんを隠すように、世那は一歩前に出た。世那の右手はひなちゃんの左手首を掴んでいる。


