男たちの沸き立つ声に「えっ」と驚いた様子のひなちゃんは、小さく肩を揺らしていた。一方で、こんなのは日常茶飯事の世那は煩わしそうに眉を顰めている。
「ひなちゃん、世那のこと ''世那くん'' って呼んでんの?!」
「う、うん……」
「うわーうらやましー。きゅんきゅんするー」
「なあ、ひなちゃん。一回だけでいいから、俺のこと、"拓巳くん" って呼んでくんね?」
「えっ、あの、」
「佐野、死んで」
冷ややかな視線と共に、淡々とした口調で罵倒の言葉を口にする世那。当の佐野は気にすることなく「別にいいだろ~減るもんじゃねえし」と舌を出して世那に反抗している。
「つーかさ、世那ってひなちゃんのこと未だに羽森さん呼びだよな」
「え?」
「あれ。俺らの前だと羽森さんって呼んでるけど、ちげーの?」
「世那くん、そうなの?」
少しだけ目を丸くするひなちゃんは、首を傾げながら世那を見上げた。
三宅と安達の言う通り、世那の羽森さん呼びはずっと変わらない。今日だって「羽森さんと放課後遊びに行く」と俺らに告げていた。
だけどひなちゃんのこの反応を見るに、本人の前では ''羽森さん'' とは呼んでいないらしい。
「世那。羽森さんのこと、なんて呼んでんの」
にやり、口角が上がる。


