「羽森さん」
「ひゃ、はいっ!」
動揺が隠しきれず返事を盛大に噛んでしまった。そんな私を笑うことなく、柊くんは真剣な表情と眼差しを向ける。
「好きです」
「っ、」
「一年の時からずっと、羽森さんのことが好きだった」
柊くんの落ち着いた声が鼓膜を揺すった。
ずっと、ずっと夢見てきた。柊くんの言葉に目頭がぐっと熱くなる。
「今日で引退だから、俺はもう白石東のバスケ部じゃなくなる」
「うん」
「ライバル校の選手でもなくなる」
「うん」
「だから、」
目の前の柊くんの顔がゆらゆらと揺れる。同じように、柊くんの澄んだ瞳も切なく揺れているように見える。
「俺の彼女になってください」
少し震えたその声に胸がきゅうっと締め付けられた。ぽろぽろと歯止めが効かなくなった涙が頬を伝う。
「っ…、ぅ、私も…」
喉を引き攣らせながら懸命に声を出す。
「私も、柊くんのことが、好きです」
瞬きをするたびに溢れる涙と共に、心に積もりに積もった柊くんへの想いが言葉となって溢れだした。
「初めて柊くんを見た時から、ずっと、ずっと、好きだったの」


