「あら〜、青春ねぇ〜」
「ほんとねえ。年甲斐もなくキュンキュンしちゃったわ」
私たちの会話を隣で聞いていたお婆さま二人組は、私と柊くんの顔を交互に見ながら、これでもかと目尻を下げた。
途端にさっきの自分の言葉が恥ずかしくなってしまって、曖昧に笑みを浮かべたまま静かに顔を俯かせた。
休日ということもあって、夕方でも店内は多くの人で賑わっている。ここではゆっくりお話ができなさそうなので、一旦外へ出て近くの公園まで歩いてきた。
ベンチに腰掛けてピンク、オレンジ、青のグラデーションに染まった綺麗な夕方の空を見上げる。
「空、すごく綺麗だね」
滑らかなグラデーションの空が本当に綺麗で。思わず見惚れてぽつり、言葉を落とした。
だけど柊くんからの反応が返ってこない。少し不安になって左隣へ顔を向けると、私をじっと見つめる柊くんの瞳がそこにはあった。
「……柊くん?」
「あ、ごめん。意識がぶっ飛んでた」
「ええ、大丈夫?疲れてるもんね」
あんなに濃い試合を二試合も戦ったんだ。精神的にも体力的にもかなり疲れているはずだ。
眉を下げる私を見て首を横に振った柊くんは「いや、違う。疲れてるとかそんなんじゃなくて、」と一旦言葉を区切った。
「……羽森さんに見惚れてた」
身体の中心で何かがぼん!っと爆発した。一気に熱が全身を駆け巡る。
甘い……甘すぎる……。今日の柊くんは私の心を狂わせる。


