そう声を上げると、私と同じように頬へと手をもっていく柊くんの姿が目の前にはあった。
「……痛いわ」
「でしょ?!」
「うん」
真顔で頬をつねっている姿がなんだか面白くて、くすっと吹き出してしまった。
「ふふっ。私もこれが夢だったら、困っちゃうよ」
小さく笑い続けていると、「俺も困る」と柊くんは口角を持ち上げた。
柊くんの笑った顔はなかなか見ることができないから、貴重だ。
「やばいね」
「やばい?」
「羽森さんのおかげで、めちゃくちゃ気合い入った」
「本当?」
「うん。まじで頑張れる」
柔らかく目尻を下げる柊くんの優しくて甘い笑顔に、また胸が締め付けられる。
「羽森さん」
「うん?」
「俺の夢、叶えてくれてありがとう」
「柊くんの夢?」
「好きな子に、試合を応援してもらうっていう夢」
「えっ……?!」
柊くんの口からサラッと飛び出した "好きな子" というパワーワードに、ぶわっと顔が熱くなる。
「羽森さん」
「は、い…?」
「この大会が終わったら、羽森さんに伝えたいことがある」
「っ、」
「だから今日、帰らないで待っててほしい」
顔を真っ赤にしながら、壊れたおもちゃのように首を縦に振り続ける私。そしてそんな私を見つめる柊くんの顔も、同じように赤く染まっていた。


