日々、アオハル


私たちの真正面、10メートルほど先からこちらに向かって歩いてくる黒のユニフォーム姿の2人組。遠目からでもすぐに分かった。


あれは、柊くんと大河原くんだ。


横並びになって話をしている2人は私たちの存在にはまだ気付いていない。少しずつ、少しずつ、距離が近付いていく。――と、先にこちらを向いたのは大河原くんだった。


目を僅かに見開かせた大河原くんは、私と光希を順に見た後、柊くんの方へと顔を向け直した。肩に手をのせて何かを話しかけているよう。


そしてすぐ、大河原くんへと向けられていた柊くんのアンニュイな瞳が私をとらえた。


『……は、』


声は聞こえないけど、柊くんの口は "は" の形に開いたまま固まっている。その場でぴたりと止まった柊くんは、見開かせた目を真っ直ぐ私へと向けていた。


「やっば。柊ウケんだけど」


ケラケラと笑い出した光希は一旦立ち止まって私を見下ろした。


「俺、先に場所取ってるから」

「え?」

「ひなは柊んとこ行ってこいよ」

「……ありがとう、光希」

「ん」


先にひとりで柊くんたちの方へと歩き出した光希は、2人へ声をかけた後、観客席の方へと消えていった。