日々、アオハル


車内に乗り込んですぐ、扉横の二人席に座る柊くんの姿が見えた。一瞬で視界の彩度が上がる。


首元の黒いマフラーに顔半分を埋めていた柊くんがゆっくりと顔を上げた。視線がかち合い、柊くんの表情が少し緩まる。こちらに向かって右手が小さく振られ、私も同じように小さく振り返した。


「柊くん、おはよう」

「おはよう、羽森さん」


挨拶を交わして、柊くんの隣に浅く腰掛ける。


初めて見る柊くんの私服姿に、すでに心はノックアウト寸前。


制服でもジャージでもユニフォームでもなく、ブラウンのロングコートに黒スキニーの今日のコーディネートは普段より大人っぽく見える。


「……」

「(かっこいい……)」

「……」

「(どうしよう、かっこいい)」


何度会ったって、柊くんのかっこよさに慣れることは難しい。胸の中には口に出せない思いがどんどん溜まっていく。


私服姿の威力は思っていた以上で、じわじわと私に襲いかかる。隣にいるだけでドキドキして、恥ずかしくなって、まともに顔を見れなくなる。


今日こそは、おどおどせずに堂々と話したいと思っていたのに……。


「(……やばいかも)」

「やばいかも」

「えっ」


心の声が隣からそっくりそのまま聞こえた。気持ちを読み取られたのかと思い驚いて横を向くと、頬をほんのり赤くする柊くんの姿が目の前にはあった。