「……お疲れ様、水戸さん」
柊くんが来た方とは反対側。左手から現れた水戸さんは、車に荷物を詰め込みに行く途中だったのか、ウィンドブレーカーを羽織り両肩にバッグを掛けた状態で立っていた。
上げたままの口角をキープする私とは違い、すぐに口元を下げた水戸さんは、私の元へと歩いてくる。
「(さっきの柊くんとの会話、聞かれてたらどうしよう……)」
「(何も聞かれてませんように……)」
水戸さんがこのまま横を過ぎ去ってくるれることを祈りながら、ジャグを持ったまま立ち竦む。
だけどその願いも虚しく、水戸さんは私の数歩先で止まった。
「羽森さんさ、柊くんと付き合ってるわけではないんだよね?」
一言目としては直球すぎる質問に、声も出なかった。動揺を隠せず勢いよく顔を上げると、硬い表情が目の前にはあった。
「クリスマス。柊くんと出かけるんでしょ?」
水戸さんは私の返事を聞く前に言葉を続ける。言葉の節々に棘を感じてしまうのは、きっと気のせいではない。
「さっきの話、聞こえてたの?」
「あ~ごめんね。立ち聞きするつもりはなかったんだけど、2人の会話はたまたま聞こえちゃった」
「そっか……、」
「でもね、クリスマスに出かけるってことはけっこう前から知ってたの」
「え……、どうして?」
「うちはやけに声が大きい部員が多いの。佐野くんとか、三宅くんや安達くん」


