日々、アオハル


右手を振り向くと、体育館を出てすぐの私のように、ユニフォームの上から羽織ったジャージの袖に両手を引っ込め、背を少し丸めて立っている柊くんの姿があった。


下はまだユニフォームの半ズボンを履いていて、露出されている足元は見ているだけで寒い。


「お疲れ様」と私に近付く柊くんに「お疲れ様」と返して、流していた水を一旦止める。


「水、冷たいでしょ」

「うん。すごく冷たい」

「これ使って」


柊くんは引っ込めていた右手を外気に晒すと、握っていたホッカイロを私に差し出した。


「え、いいの?」

「うん」

「わ、あったかい」


凍えていた指先がじんわりとほぐれていく。頬を緩めながら顔を上げると、口元を僅かに上げながら優しげな表情を浮かべる柊くんと目が合った。


心の芯までほかほかするような、温かい気持ちになる。


「クリスマス、ありがとね」

「ううん。こちらこそ誘ってくれてありがとう」

「パークタウンでやってる、光のページェントって知ってる?」

「うん!写真でしか見たことはないけど、イルミネーションが凄いところだよね?」

「そう。羽森さんがよければ、そこに行かない?」

「行ってみたい……!」

「じゃあそうしよう。時間とか詳しいことはまた連絡する」

「うん。楽しみにしてるね」

「俺も。じゃあ、先に戻るね。お疲れ」


「お疲れ様」とその背中を見送る。交わした会話を脳内でもう一度再生して、スムーズに話せたことにほっと胸を撫で下ろす。


緩み切った顔に気合いを入れ直して、貰ったホッカイロを左手、水気を切ったジャグを右手に持ち、体育館へ戻ろうとした。




「あ……、」

「お疲れ様。羽森さん」


表情が、一気に固まった。