お互い頭を下げ合ったまま、「いいや、俺の方がごめん」「いやいや、私の方がごめん」と"ごめん合戦"が3ラリーほど続いた。
ようやくお互い頭を上げ、顔を見合わせた時、どちらからともなく、くすっと笑いが起こった。
「俺が幼馴染離れできてなかった」
「幼馴染離れ?」
「ああ。相手が白石東の柊だってのは関係ねえ。ひなの好きになった相手が誰であっても、納得するのに時間はかかったろうな」
「……」
「まあ、あれだな。この気持ちは秋都しゅうとと冬眞かずまなら分かってくれんだろ」
お兄ちゃん2人の名前を出した光希は、少し照れくさそうに笑う。「シスコンだ」と少し茶化せば「俺はひなの3番目の兄ちゃんだからな」と同じように軽口が返ってきた。
「この間も言ったけど、柊を好きになったことを責めるつもりはねーから」
「……光希、」
「部活中と大会中は俺らのマネージャーとしてしっかり支えてもらうけど、他の時間をどう使おうがそれはひなの自由だから。クリスマスも、普通に楽しんでこいよ」
「……」
「まあ今日の試合中、手元狂ったフリして柊の顔面にボール当てるかもしんねーけど」
「ちょっと!それはやめてよ」
「多分ジョーダンな」
ケラケラと笑いながら目を細める光希の表情に、少し胸が痛くなる。小さい頃からずっと一緒にいるから、笑い方一つで分かってしまう。
光希の言葉は恐らく本心。だけどまだ、100パーセントの気持ちでその言葉を言えていないはず。
自分の気持ちを押し殺して、私の気持ちを優先してくれる光希の優しい心を汲んで、その笑顔の裏に気付かないフリをした。


