ラブソード

 それからお殿様は、ノリオくんたちに言われるまま、お姫様の部屋に行き、持っていたお手玉や、けん玉などのおもちゃで遊びました。
 
 童心に戻りムキになるお殿様を見て、お姫様は笑い、それにつられるようにお殿様も家来までもが笑っていました。
 皆が笑い遊び疲れた頃、すっかり二人は仲良くしていました。
 大人になると忘れてしまう。子供の中では常識のようです。
 
 お殿様は改めて、ノリオくんに褒美を与えると声をかけます。

「用意したものすべて受け取ると良い。それから、ワシの家臣に迎えるぞ」

 しかし、ノリオくんは受け取ることも、家臣になることはありませんでした。

「どうした? 大出世だぞ、嬉しくないのか?」

「うん、僕たちはこのまま山に戻ります。今までどうりみんなと仲良く暮らします。幸せは強要するものではなく、頑張ることだとわかったからです」

「そうか、でも遠慮していると、分前がなくなるぞ」

 褒美の方に目を移すと、妖怪達は竹馬や、あんころ餅の入ったお重を抱きかかえていました。
 そして再びお殿様から、聞き覚えのある声がします。

「えらいぞノリオ。よくぞそのことに気づいたな」

 お殿様が目を閉じると、口からエクトプラズムのように仙人様が抜け出しました。

「もしお主が、そのままラブソードを使い続けていたら、ロバにしてサーカスに売り飛ばすとこだったぞ」

 どうやら仙人様は、ノリオくんたちが心配で、お殿様の中に入り込んでいたみたいです。
 のっぺらぼうは、驚き声をかけます。

「ラブソードの魔法、効いていない」

「ふっふっふっ、わしのように偉い仙人様はな、常日頃から勉強や、運動、家庭の手伝いをしているから、ラブソードの効き目を無効にできるのじゃよ。でも大変だったんじゃぞ」
 
 側にいたカラスも、 けわしい表情で話します。

「まったくクソガキは、玄関の戸締まり、コンセントの抜き忘れは、確認して出かけたくせに、ラブソードの効力を切っていかないなんて」

 そんな悪態をつくカラスに、のっぺらぼうはラブソードを当てます。
「仙人様」
 
 今度はカラスの目がハートマークになり、嫌がる仙人様に抱きつきます。
 そんな二人を見て、ノリオくんは思います。
 やはり物事は強要してはいけない。話し合って解決していかないと。

 僕はそのことを大事にし、勉強して、外交官になろう。
 ノリオくんはそう誓うと、ラブソードを池のほとりに投げ捨てるのでした。

 かくして、ノリオくんたちは山に帰り、将来のため勉強をするのですが、この話は、お殿様や、お姫様。江戸の住民らから広まり、ノリオくんが大人になるまでには、戦争のない話し合いで解決できる世の中になっていました。

 現在も世界の国々で、防衛費や軍事費が使われないことによって、貧困で悩む人々、年金や環境問題全て解決しているのは、皆様もご存じのように、ラブソードがきっかけだったことは、言うまでもありません。
                          終わり