江戸の町、浅草に着くと、桃色に輝く剣を持った少年と、初めてみる妖怪の姿に人々の注目が’集まります。

「なんでい、あの格好はよ」

「コスプレじゃねえか? 写真を撮ろう」

 町人たちはノリオくんたちを囲むように集まり、スマホで写真を撮り始めました。

「僕は仲良しになる魔法の力を持ってます。世界平和に役立てたいので、誰か困っていませんか?」

 町人たちは、その言葉にどよめきました。

「おいおい、そんなセリフのアニメあったかい?」
「ゲームキャラか、何かか?」
「ところで誰だよ、こんなところにお地蔵様置いたの?」

 誰もその言葉を信じないでいましたが、野次馬の中から、青年が一人出てきました。
 綺麗に青く染まった着物を着て、前掛けをしています。

「ねえ、おいら呉服屋のせがれ、しろ吉って名前だけど。仲良しになる魔法って本当かい?」

「うん、本当だよ」
 
 しろ吉も笑顔になると

「じゃあ、お願いがあるんだ、お礼もするからさ、着いてきてくれないかい」

 そう語りノリオくんたちを、ある場所に連れて行きました。  
 向かった先は、近くの長屋でした。
 壁の隅から覗き込む目の先には、長屋中央にある共用の井戸を使い、洗い物をしている娘が見えました。

「ほら、あの子がお松ちゃんだよ。ああやって、普段は寝たきりのお父っつあんの面倒を見て、夜は酒処で働いているんだ」

 お松は、清楚で可憐で、ナチュラルメークが似合う女性でした。

「きれいな人ですね」                                 

「そうさ、見た目も可愛いし、踊りだって素敵なんだぜ。盆踊りの時だって、太鼓のリズムとシンクロしているし………お願いっていうのは、お松ちゃんと仲良くなりたいんだ。いずれは夫婦になりていと考えているんだ」
 
 ノリオくんはその頼みに悩んでいると、ろくろっ首がノリオくんの目を見て、笑顔でうなずきました。
 お松は、洗い物を終わらせ、長屋の中に入っていきます。
 ノリオくんたちは、後をおいました。