みんなは、お地蔵様が狸であることを知っていましたが、狸だけがバレていないと思い我慢しています。
 カラスはノリオくんたちを見渡すと、鼻で笑うように話しました。

「全く子供ってやつは。いい身分だねー、勉強もしないで」

 初めてみる、喋るカラスにノリオくんたちは怖がるように抱き合いました。

「驚くのはしょうがないか、喋るカラスなんて珍しいからね。そうさ、僕は動物と人間の言葉をしゃべれるバイリンガルなのさ」

 ノリオくんたちは恐れながら、カラスを見つめていました。

「ところで君達は、地球温暖化についてどう思っているのかい?」

 ノリオくんたちは、目を合わせました。
 カラスは呆れたように、話を続けます。

「おいおい、そんなことも知らないのかい? じゃあ、世界で貧困に悩む人々や、絶滅してゆく動物たち。老後のことなんか考えてないだろう?」

 妖怪たちは質問の内容より、喋るカラスが珍しいと感じると、羽や頭を掴み引っ張ったりしていました。

「やっ、やめろクソガキ」

 取り乱すカラスに、のっぺらぼうが片言で話します。

「ノリオは考えている。ノリオ優しい」

 カラスは目を細めると、笑うように話しました。

「おやおや、優しいだけじゃダメさ。勉強をして、出世しないと問題は解決できないのさ」

 ノリオくんの顔が曇りました。

「出世しないと、解決できないの?」

 カラスは意地悪そうに笑います。

「人間っていうのは愚かな生き物だから、他人の意見など聞き入れたくないのさ、時には力で抑え言いくるめないと、反論する奴が出てくるものさ」

 ノリオくんはその言葉を聞き、悲しい気持ちになりました。

「なんだかやだなー、みんな仲がいいものだと思っていたから」

 ろくろっ首は、ノリオくんの悲しそうな表情を見て可哀想になると、知識を振り絞り話します。

「そうだ、仙人様に相談したら良いでありんす。きっとノリオらしい方法を、教えてくれるでありんす」

「仙人様?」

 のっぺらぼうはその言葉を聞くと、生き生きとした口調で話します。

「仙人様。物知り」

 ノリオくんは妖怪たちの言葉に悩み決めかねていると、お地蔵様に化けた狸も、しゃべりたくてうずうずしていました。
 思わず、我慢ができずに話してしまいます。

「真実とは経験というテストの結果得られるものだと、物理学者アインシュタインが言っていたよ。どうだい? 悩んでいるなら統計学的に、多数決を取てみたら」
 
 カラスは突然話したお地蔵様に、目を丸くして口を開けていました。