むかしむかしの江戸時代。
 とある山奥の神社に、ノリオくんという名の男の子が住んでいました。
 家族も親戚もいないノリオくんでしたが、寂しく感じることはありません。
 
 それはどこからか現れる妖怪たちと、いつも楽しく遊んでいたからです。
 遊んでいたのは、小坊主の姿をしたのっぺらぼう。
 顔が泳がすように首を伸ばし、幼いながらも花魁の姿をした、ろくろっ首。

 傘から片足だけを出し、大きな一つ目と長い舌を垂らした傘お化け。
 近くには、いつもお地蔵様に化けた狸もいました。
 五人? いえ、一人と四妖怪はいつも一緒に遊んでいました。

 時には野山を走ったり、時には川で水遊びをし、お腹がへればみんなでお芋や、山菜を取って食べていました。
 そんなある日の事、いつものようにノリオくんと妖怪たちが遊んでいた時の話です。
 日当たりの良い神社の前でカードゲームをしていると、のっぺらぼうの頭に鳥の糞が落ちてきました。
 
 皆の会話は止まり、のっぺらぼうは表情はわからないながらも、うつむきます。
 それを見て、ノリオくんは言いました。

「あっ、うんがついたね。これからきっと、いいことがあるよ」

 みんなが微笑むと、糞を落とされたのっぺらぼうは声を出し笑っています。
 空を見上げると、カラスが頭上を飛んでいました。
 この辺では見ることのない大きなカラスです。

 優雅にゆっくり二回飛び回ると、カァーカァーっと鳴きながら、お地蔵様の頭に泊まりました。