君がいなけりゃ、意味がない







「全身を包むトキメキ秋風ッ〜〜〜!
あー。この瞬間、一年で一番幸せかもぉ」


「わかる。無駄に歩きたくなったりするもん。
いつもは電車使う、会社と家の一駅間とか」


「でもさぁ、言ってもまだ暑いじゃん?特に日中。
いまだに真夏と同じ格好してんだけど。
去年の10月も、こんなんだっけ?」


「トレンチコートとか、いつ着たらええんでしょうね」


「ねー。さすがに月末には涼しくなってるかなぁ」


「……いやいや先輩。
こんな、会社の休憩室でも出来るような話してる場合ちゃうんですよ」


「いやー。だって。
ここらで一旦、気持ちを平常に戻さないとさ。
胸熱すぎて溶けちゃうよ」


「すっごいですよね、よさこい。
踊りだけでもキレッキレでカッコイイのに。
曲も、衣装も、口上も、全部含めて胸熱っすね」


「やっぱりさぁ、こう……熱中してる姿って本当にカッコイイねぇ。ちょっと泣きそう」


「え……ちょっと、俺も入れてもらおかな」


「やめときな。生半可な気持ちで触れると、ヤケドするぜ……」


「いや誰よアナタ。今日はじめて見たくせに」


「うははー、感化されやすいんだよね」


「あ、休憩入るんやって。今のうちに会場回ろ」


「うん。てかさ、うちの会社の人どこにいるんだろ。全然会わないね」


「そんなことより先輩、こっちに焼きそばありますよ」


「え、食べたい!お腹すいた。
あれ?並んでるの、谷山さんと佐藤さんじゃない?」


「やっぱ後にしよ、焼きそば。
あっちの牛串とかどう?」


「……何?会いたくないの?喧嘩してるとか?」


「いいえ。絶対邪魔されたくないという強い意志」


「邪魔 #とは」


「そんなハッシュタグつけても、返信0件です」


「現代における虚しさの象徴だね」


「そんなんで推し量るなんて、先輩もまだまだお子ちゃまですね」


「なんで憎まれ口は即レスなの。
で、邪魔ってどういう意味?」


「………………」


「なぜ黙る。都合悪くなったな?」


「いや。どう考えても先輩が悪い」


「なんでよ!」


「外出するの、月1回とか言うから」


「……話の繋がりはよくわかんないけど。
別に、そうと決めてるわけじゃないよ。
ちなみに、もちろん0回でも可」


「じゃあ……俺が遊ぼって言うたら、家出てくれます?イベント以外で」


「えー。そもそも、遊びたいか?私と」


「………………」


「ほら。なんか、都合悪そうじゃん」


「ほんま……何食べて生きてたら、そんな暴力的になれんねん」


「もー。何?さっきから、よくわかんないこと言って。
ご機嫌ナナメ?なぐさめてあげようか?」


「え。何してくれるんですか」


「んーーーー。
仕方ない……私の牛串、半分あげるかぁ。断腸の思いで」


「食べ物のことしか頭ないやん。
まあ、今回はそれで許してあげますよ」


「あれ……私、何を許されようとしてるんだろ……」