神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

シュニィがそんな陰湿な嫌がらせを受ける理由は、一つしかない。

「…そいつら、やっぱりシュニィがアルデン人だから?」

「あぁ」

憎々しげに、キュレムが頷く。

そうか…。

シュニィはアルデン人という、ちょっと珍しい人種だ。

特徴と言えば、その透き通るような白い髪。

その髪を見れば、シュニィがアルデン人であることは明白。

そのせいで、下らない差別意識を持つ者もいる。

人種が何だって言うんだ。馬鹿らしい。

生まれがどうであろうと、何人だろうと、同じ人間に違いないのに。

「それに、シュニィさんが女性だから、っていう理由もあるんじゃないですか?あの時、各国の代表者の中で、女性なのはシュニィさんだけでしたから」

「…そうだったのか…」

シュニィがアルデン人で…しかも、女だから…。

俺は、腹立たしさに拳を握り締めたが。

「…??女の子だったら、何で席がないの?女の子も男の子も人間だよ?」

ベリクリーデは、理由が分からないようで。

きょとんと首を傾げ、不思議そうに尋ねた。

…ベリクリーデ。

世界中の奴らが、お前と同じ考えを持ってくれたらな。

世の中には未だに、「男だから」、「女だから」と、下らない考えの持ち主が大勢いるんだよ。

「…で、その後どうしたんだ?」

「え?いや…それはまぁ…」

言葉を濁すキュレム。

の、代わりにルイーシュが説明してくれた。

「キュレムさんは、無言で自分の席に向かうなり、自分の名前が書かれたネームプレートに、マジックペンで『シュニィ』って書いて、そこを強引にシュニィさんの席にしたんですよ」

マジかよ。

「でも、そうするとキュレムの席が」

「なくなるでしょう?だから、自分はテーブルの上に着席したんです。テーブルのど真ん中に。胡座をかいて」

「…」

…マジかよ。

「で、『俺、今日この会議が終わるまでぜってー降りねぇから。ここで会議するからな』って宣言したんです」

「…」

「慌ててシュニィさんが止めても、会議の責任者が謝って、席を用意すると言っても駄目でした。本当に、会議が終わるまでテーブルのど真ん中に陣取ってましたよ」

「…」

俺は、無言でキュレムを見つめた。

するとキュレムは、そっぽを向いて口笛を吹き。

「いやー、あの頃は自分も若かったなー」

などと言い訳をしていた。

…今も充分若いだろ、お前。

「だって、シュニィ馬鹿にされたらムカつくだろ?」

「そりゃ…俺だってムカつくけど…。…どうせそれ、ルイーシュも面白がって止めなかったんだろ?」

「え?何で分かるんですか、ジュリスさん」

…そんなことだろうと思った。

自業自得ではあるが、陰湿な嫌がらせをした諸外国の連中が気の毒だよ。

まさか、そんな方法で仕返しされるとは思ってなかっただろうから。

何度も言うが、自業自得である。

良い歳して、つまんない嫌がらせなんか考えるから、そういう恥を晒すことになるんだよ。

そして、シュニィが今回の会議に、俺に出席を依頼した理由が分かった。

今回は、そんな「大惨事」を巻き起こさないよう、俺を指名したってわけね。