神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「まぁ、特殊なプレイをやっているということで、放っておきましょうか」

「だな。夫婦漫才ってことで」

勝手に一人決めにして、さっさと立ち去ろうとするキュレムとルイーシュを。

俺は、二人の前に立ち塞がるようにして止めた。

「ちょっと待て。誤解したまま去るんじゃねぇ」

特殊なプレイでも、夫婦漫才でもねーよ。

「じゃあ何だよ?」

「これは…。事情があるんだ。シュニィに聞いてみてくれ、本当だから」

これは、数時間前のこと。

俺は、シュニィにとある任務を託された。

第◯回世界魔導師の権利保護会議、ってのが、外国で行われるらしくて。

10年に一度くらいの頻度で行われるその会議に、ルーデュニア聖王国は、毎回呼ばれているそうなのだが。

今年は、俺に行ってくれないか、ということだった。

その話をすると、キュレムは思い出しように、ぽん、と手を打った。

「あぁ、それ前回、自分、参加したわ」

何だと?

「キュレム、お前参加したことあったのか」

「もう何年も前のことだから忘れてた。確かあの時、シュニィがルーデュニア聖王国の代表で、俺とルイーシュが補佐的な役割で参加したんだよ」

へぇ。

俺は覚えがないから、その頃俺はまだルーデュニア聖王国には来てなかったんだろうな。

思えば、あれから随分時が経ったものだ。

「ルイーシュ、お前覚えてるか?」

「あぁ、覚えてますよ。キュレムさんが会議をめちゃくちゃにしたことも」

えっ?

これには、キュレム自身もびっくり。

「…マジ?自分、なんかしたっけ?」

「覚えてないんですか。ほら、机の上に乗ったじゃないですか」

「あー、あれね。はいはい、思い出したわ」

…机の上に乗った…!?

それってどういう状況だよ?

「キュレム、悪いことしたの?」

こてん、と首を傾げるベリクリーデ。

「ちげーよ、それは誤解だベリクリーデちゃん。どう考えても、悪いのは諸外国の代表達だ」

キュレムは口は悪いけど、常識は弁えてる人間だと思ってたのに。

世界会議の場で、机の上に乗るなんて暴挙をやらかすとは。

一体何があったんだ?

「それがですね、その会議室に入った時、シュニィさんの席がなかったんですよ」

と、ルイーシュ。

「え?」

「参加者名簿には、確かにシュニィさんの名前が書いてあったはずです。それなのに、俺とキュレムさんの席は用意されていて、シュニィさんの席だけなかったんです」

「…!」

…なんてことを。

「それは…嫌がらせの類、だよな?」

「間違いないね。俺達が入ってくるなり、シュニィの方を見ながらニヤニヤヒソヒソしてたんだから」

吐き捨てるように言うキュレム。

未だに、当時の怒りが蘇るらしい。

なんて陰湿な嫌がらせだ。国際会議の場で。

意図的に、シュニィの席だけ用意されていないなんて。

キュレムとルイーシュの名札が貼られた席はあるのに、自分の名前だけ、図ったように用意されていないのを見て。

シュニィがどんな気持ちだったか、想像するだけで気分が悪くなる。