神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

この生き物の登場に、会場内は小さく悲鳴が上がった。

俺だって、これがマシュリだと気づかなかったら、同じような反応になってたと思う。

「あ、あれって、ま、マシュリさんだよね?」

小声で、天音が聞いてきた。

「た、多分…」

あいつ器用だから。「イヌとサルとキジをミックスした生き物になって」と依頼されて、あの姿に『変化』したんだろう。

器用なのか不器用なのか、どっちだ?

つーかあの生き物、何?

「カブ太郎は、野生の『イヌサルキジ猫』に会ったんだって」

何?その色んな動物のミックスジュースみたいな名前。

それは犬なのか?猿なのか?キジなのか?…猫なのか?

「にゃー」

と、鳴くマシュリ。

…猫なんだ。

どうでも良いが、お前…その姿で「にゃー」はだいぶ苦しいぞ。

「カブ太郎はこう言った。

『やぁ、イヌサルキジ猫さん。そんなところで何してるの?』

『君こそ、鎌なんて持ってどうしたの?何処に行くんだい』

『俺は、これから鬼ヶ島に、鬼退治に行くんだ』」

意気揚々と答えるカブ太郎。

「『良かったら、イヌサルキジ猫さんも一緒に来てくれないか?』

『え、僕が?いや、僕はそういうの興味ないから、良いよ』

『そう言わないで。ほら、これをあげるよ』」

カブ太郎は、左手に持っていた包みを、マシュリ…ならぬ、イヌサルキジ猫、略してキジ猫の前に出した。

それを見るなり、キジ猫の目の色が変わった。

「『美味しい美味しい【きび団子】だよ。おばあさんが作ってくれたんだ。ほら、これを食べてご覧よ』」

すぐりカブ太郎が、小さく丸めたお団子を1個、ぽいっ、と床に投げた。

マシュリキジ猫は、すぐさまその『きび団子』に齧り付いた。

あれ、小道具かと思いきや、本物の食べ物だ。

そして多分、あれ…ちゅちゅ〜るだ。

マシュリの大好きな、猫用ちゅちゅ〜るのお団子。

本物の大好物だから、マシュリキジ猫はむしゃむしゃと貪った。

だが、それがまた異様な光景に見えた。

「『ほーら、ほーら。美味しいでしょう?おばあちゃん特製の【きび団子】』

『はぁ、はぁ…。オイシイ、オイシイ…』」

恍惚と、きび団子を貪るキジ猫。

…なぁ。あれ、なんかヤバいもの混ざってない?

「『鬼退治、一緒に来てくれるよね?』

『もちろんです。何処まででもついていきます…!』

こうして、カブ太郎とイヌサルキジ猫は、一緒に鬼退治に行くことになったんだって」

役者が足りないせいで、カブ太郎の仲間はこれ以上増えない。

そしてそのまま、舞台は鬼ヶ島に移った。