神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

こうして。

俺はシルナに巻き込まれて、演劇会が行われる魔導師養成幼稚園にやって来た。

「ほ、本当に入るんですか…?」

人一倍良識のある天音は、幼稚園を前に躊躇っていたが。

「大丈夫、大丈夫!いざとなったら、令月君達のお手伝いです!って言い張ろう」

人一倍良識のないシルナに、強引に巻き込まれ。

あれよあれよという間に、会場の中に連れ込まれた。

あぁ…ついにやってしまった。

違うんです。いたいけな園児達を盗み見て、「ゲヘヘ」しようとしてるんじゃなく。

ただ、令月達が心配なだけなんです。

…いざとなったら、「嫌がってるのに、シルナに無理矢理連れてこられました!」って訴えよう。

そうすれば、ロリコン疑惑で捕まるのはシルナだけで済む。

実際、巻き込まれたのは事実だしな。

恐る恐る、会場の中に入ると。

意外にたくさん父兄達が集まっていて、俺達みたいな部外者が紛れ込んでも、まったく目立たなかった。

でもな、目立たなかったら良いってもんじゃないんだよ。

すると。

壇上では、小さな園児達が、精一杯演劇を披露していた。

頭にぴょこっとした触角、背中に玩具の羽根を浸けて、黄色い服を着て。

「ハチさんぶんぶん♪」なんて歌ってる。

非常に微笑ましい。

「わぁ〜、見てよ羽久。ちっちゃい子、可愛いね」

「お前が言うと、犯罪者以外の何物でもないな」

「酷い!」

だって、事実なんだもん。

ごめんな、シルナが少しでも下心を見せたら、問答無用で叩き出すから許してくれ。

で、その可愛い園児達の発表が終わると。

「…ありがとうございました。それでは次は、皆さんお待ちかね。聖魔騎士団から特別ゲストがいらっしゃいました!」

おっ?

壇上の上で司会をする、エプロン姿の女性(幼稚園の先生だと思われる)が、マイクを片手に宣言した。

「聖魔騎士団…ではないけど、特別ゲストって令月達のことだよな?」

「た、多分」

「早速来やがったか…」

果たして、何が出てくることやら。

こうなったら、覚悟を決めて見るしかない。

「えー、タイトル『カブ太郎』。それではどうぞー」

司会のお姉さんが笑顔でそう言って、壇上から降りた。

おい、カブ太郎って何だよ…と、思ったその時。

「んぁっ?」

「ぴゃっ!」

突然、会場内が真っ暗になった。

誰かが、会場の明かりを落としたのだ。

誰も、部屋の電灯には触っていないはずなのに。

俺もシルナも天音も、会場にいる父兄や園児達も、びっくりして不安げな声をあげていたが。

何だ停電か、みたいな。

しかし、これは停電ではない。意図的に部屋の照明が切られたのだ。

俺はすぐにピンと来た。

すぐりだ。

すぐりが得意の糸魔法で、誰にも見られぬように透明な糸を伸ばし、照明のスイッチをオフにしたのだ。

あいつは、自分の糸を両手のように自由自在に扱える。

この程度のこと、容易いものだ。