神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺達はいつもシュニィや、聖魔騎士団の皆に世話になっている。

だから彼らが困っていることがあるなら、何でもしよう、と思っている。

この気持ちに嘘偽りはない。出来ることなら何でもする。それが例え命を懸ける行為だとしても。

…でも、このお願いは…さすがに。

「…あのな、シュニィ」

ポカーンとしているシルナの代わりに、俺がそう答えた。

「シュニィや聖魔騎士団の皆の為に出来ることなら、俺は何だってする。…何だってする、けども」

「は、はい」

「…さすがに、幼稚園児の変装は出来ない」

背丈がもう。絶対幼稚園児じゃ通用しないもん。

シルナなんておっさんだし。

かく言う俺だって、いたいけな幼稚園児にとっては、おっさんみたいなもんだろう。

とてもじゃないけど、幼稚園児に紛れ込むなんて無理、

と、思ったが。

「あ、いえ、違うんです。そうじゃなくて」

「え?」

「皆さんに幼稚園児の演技をしろとは言いません。…さすがに」

だよな?

ありがとう。分かってくれて嬉しいよ。

「そうではなく…えぇと、かくかくしかじかで…」

と、シュニィは事情を説明してくれた。





まずきっかけは、王都セレーナにある、とある魔導幼稚園の依頼だったそうだ。

ルーデュニア聖王国には、幼い頃から魔導適性のある子供を、魔導師として育てる為の教育機関がある。

このイーニシュフェルト魔導学院も、その一つだが。

中には、まだ幼児の段階から魔法の勉強をする幼稚園もあるそうだ。

へぇー、早いな。

でも、両親共に魔導師で、生まれた時から魔導適性がはっきりしている子は。

魔法の正しい使い方を、早いうちから覚えることも必要なのかもしれない。

で、その魔導幼稚園が、聖魔騎士団に依頼をしてきた。

今度の幼稚園主催の演劇会に、特別ゲストとして参加してくれないか、と。

成程、それは良い考えだ。

幼魔導師に憧れるちびっ子達にとって、聖魔騎士団の魔導師とは、将来の夢そのもの。

ほら、たまにさ、警察とか消防署の人が、幼稚園とか小学校に子供達に会いに来て、体験イベントとかするじゃん?

あんな感じだよ。

あれに呼ばれて、「それなら」ということで、シュニィと…それから、アトラスが二人で行く予定だったらしい。

それも、演劇会だとか。

アトラスは魔法が使えないが、シュニィがアトラスの大剣を魔法で強化して、それを子供達の前で実演してみせる、という演目(?)を披露するつもりだったんだって。

成程。案外面白いかも。

…え?たかが大剣を振り回すだけで、何が面白いのかって?

そう思った奴は、シュニィの魔法を舐めてるな。

イーニシュフェルト魔導学院に居た時から、シュニィの魔法の才は際立っていた。

それに何より、自身の夫であるアトラスとの相性は抜群。

シュニィの手にかかれば、まさに七変化。

炎を纏った大剣、雷を纏った大剣、風を纏った大剣…はたまた、それらを精密に組み合わせて、姿形を変えることが出来る。

その様は、さながら芸術と言っても過言ではない。

あれでアトラスも、自分の子供がいることから、小さい子の相手には慣れてるしな。

あの二人なら、きっと子供達も大盛況だろう。

しかし、その演劇会が翌日に迫った今日。

大問題が起きた。

アトラスが、酷い風邪を引いてしまったそうだ。