神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「あーっ!!私のチョコが!」

しっかり持ってないからだよ。

シルナはしゅばっ、と床にしゃがみ、急いで落としたチョコを拾い始めた。

「大丈夫。3秒ルール。3秒ルールだから!ふーふーすればまだ食べれる!」

とか言いながら、かつてないほど俊敏な動きでチョコを拾い集め、箱に戻す。

凄い機敏に動いてる。普段からそれほどテキパキ動いてくれれば、もっと仕事が楽に進んだが。

動けるデブならぬ、動けるおっさん。

「…!羽久が私に失礼なことを考えてる気がする…!」

「良いから、早く拾えって。もう3秒経つぞ」

俺は床にしゃがんで、落としたチョコを拾ってやった。

そして、ようやく全部拾い集めた。

「ほっ、良かったー。チョコが無事で…」

「…あの…学院長先生…」

「…へ?」

その時シルナは、ようやく、学院長室にやって来た人物に気づいた。

…おせーよ。

そこにいたのは、困ったような表情をした…シュニィだった。

「あれっ…シュニィちゃん?」

「はい…。すみません、突然お邪魔して…」

「あ、いや…」

「…その、何だか驚かせてしまったみたいで」

…シュニィ、お前は何も悪くない。

勝手にイレースと勘違いして、チョコを床に放りだしたシルナが悪い。

シュニィの方こそ驚いただろうに。

「そんなつもりはなかったんですけど…」

「そ、そんな。良いんだよシュニィちゃん。ご、ごめんね?」

「いえ…」

…何だろう。

今日、シュニィの元気がないように感じる。

「…シュニィ、大丈夫か?」

「え?」

「何だか…あんまり顔色が良くないような気がしたから…」

良かったら、保健室から天音を呼んでこようか?

しかし、シュニィは慌てて頭を振った。

「ち、違うんです…。私は大丈夫です」

…私「は」?

それはどういう意味だ?

「ほんと?シュニィちゃん。元気ないよ。ほら、チョコ食べる?元気出るよ」

シルナは、さっきの高級チョコを差し出した。

おい。それ、さっき床に落とした奴だろ。

せめて新品を勧めろよ。

「あ、いえ…。…結構です」

だろうよ。

「それじゃ…どうしたんだ?今日は…」

「その…実は、学院長先生にお願いがあって…」

あぁ、成程。

それで、さっきからやけに申し訳無さそうに…。

「気にせず、何でも頼んでくれ」

見ての通り、シルナは暇そうなんだ。

どんな重労働でも引き受けるぞ。

「そうだよ、シュニィちゃん。気にしないで。私達だっていつも、聖魔騎士団のみんなにはお世話になってるんだから」

そうそう。持ちつ持たれつ。お互い様。

シュニィの助けになれるのなら、俺も力を尽くす次第、

「あの…それじゃ、ダメ元でお願いするんですが…。…幼稚園の演劇会に参加してもらえませんでしょうか…?」

シュニィの、このあまりに突拍子も無い頼みに。

俺もシルナも、しばし目が点になった。