神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

慌てて、ベリクリーデを止めようとしたが遅かった。

「ベリクリーデ、とまっ…」

「いらっしゃーい」

窓を開けるなり、窓のさんに降り立ったのは。




「…君達、こんなところで何やってるの?」




…え?

なんか、どっかで聞き覚えのある声。

とにかく幽霊の襲撃から逃れようと、俺は咄嗟に掴んだ調理用のスプーンを掴んだまま、振り向いた。

…スプーンでどう戦うつもりなんだ?俺よ。

そんなことより。

「お、お前…!」

「わーい。ねこちゃんだー」

ベリクリーデは、その侵入者を恐れることなく手を伸ばした。

侵入者は、猫だった。

銀色の毛並みの、なんかどっかで見覚えのある猫。

ちょ、ベリクリーデ。野生の猫を不用意に触るんじゃない。

しかし、その猫は普通の猫ではなかった。

「ジュリス、見て見てー。もっふもふー」

「…」

ベリクリーデは猫を抱き上げ、もにゅもにゅ触っていたが。

猫の方は、されるがまま。

そして、もう一度聞いてきた。

「覚えのある匂いがするから、来てみたら…君達、こんなところで何してるの?」

…猫の癖に、普通に喋ってやがる。

喋る猫…。そしてこの声…。

そうだ、思い出した。

「お前…マシュリか。マシュリ・カティア…!?」

「うん。今はいろりの姿だけど」

と言って。

マシュリは、ベリクリーデの腕の中から飛び出し、その場でくるりと一回転。

同時に、人間の姿に『変化』した。

「ほぇー…。猫じゃなくなっちゃった…」

何でちょっと残念そうなんだ、ベリクリーデ。

お前、猫好きだったのか?

「お…。…お前こそ、こんなところで何やってるんだよ…!?」

俺はスプーンを握り締めたまま、かろうじて、そう質問した。

何で、こんなところにマシュリが?

お前は、イーニシュフェルト魔導学院に住み着いてるんじゃなかったのか。

「何やってる、って…。僕はこれから、猫の集会だけど」

マシュリは、窓の外をくいっ、と指差した。

「は…?何だよ、猫の集会って」

「わー。ジュリス見て、ねこちゃんがいっぱいだよー」

「!?」

ベリクリーデは、窓の外に身を乗り出すようにして、嬉しそうな声をあげていた。

「は…!?」

ちょっと待てよ、ベリクリーデ。まだ足音は続いてるんだよ。

早く、窓を閉めないと今度こそ幽霊が…と、思ったが。

窓に駆け寄り、ベリクリーデと同じく窓から頭を出すと。

最悪のタイミングで、野良猫が俺の頭をゲシッ、と踏みつけた。

いてっ。