神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「これから、また夜が来るってのに…」

「ほぇ?」

ほぇ、じゃないんだの…。

「お前は幽霊、怖くないのかよ?」

「?ジュリスと一緒だから平気」

「あ、そう…」

あっけらかんとしてるなぁ…。

俺は全然落ち着かないけどな。今夜もまた例の足音が聞こえてくるんじゃないかって。

しかも、今日は金曜日の夜。

なんか、いかにも幽霊が出てきそうじゃないか…?

「今のところは足音だけだが…。いよいよ、姿を見せるようになったらどうすれば…」

「今日もお外、晴れてるもんねー」

「…?」

…それがどうしたんだよ?

「心配しなくても大丈夫だよ、ジュリス」

「何がだよ…?」

「きっと怖くないよ」

…何の根拠もない、ベリクリーデの励まし。

あのなぁ、お前までビビって布団の中に縮こまってしまったら、それはそれで困るけども。

だからって、こんな余裕ぶっかましてたら、幽霊に「来てくれ」って言ってるようなもん、

…ミシッ。

「うぉっ…」

突如聞こえてきた足音に、俺は身体をびくっ、と震わせた。

な、なんか今夜は早くないか?

まだ日付も変わってないのに、早速。

ミシッ…ミシッ…と、四方八方から音がする。

「畜生、また来やがった…」

「来たねー」

またしても、この足音に悩まされるのか…。

…と、思ったら。

今夜は、いつもと様子が違っていた。

昨日までは、ミシッ…ミシッ…という音だったが。

今夜は、ミシッ…ミシッ…じゃない。

ミシミシミシッ、ミシミシッ、ミシッミシミシッ、と、とんでもない軋み音。

「ちょ、何なんだ?何なんだ!?」

「今日は賑やかだねー」

いつものが6、7人分だとしたら、今夜は軽くその二倍。

恐らく、15人分くらいの足音が、一気に押し寄せてくるではないか。

幽霊が、突然本気を出してきた。

「お、落ち着けベリクリーデ」

「私は落ち着いてるよ?」

「そうだった。とにかく、盛り塩。盛り塩と線香…」

何ならお経をあげて、悪霊退散、と思ったが。

次の瞬間。

アパートの窓を、ドンッ、と叩く音がした。

「ひっ…!?」

何なんだ。今夜は一体。

いよいよ、幽霊の方も本格的に動き出したらしい。

それとも、昼間、自分達の事件のことを嗅ぎ回られたことに怒ってるのか?

花束なんて要らない、そっとしておいてくれ、と言いたいのか?

憎しみと怒りが爆発して、前の住人にそうしたように、俺達を怖がらせようと…。

ドンッ、とまた窓が叩かれた。

すると、あろうことか。

「あ、お客さんだよジュリス。はいはい、今開けるねー」

「ちょ、おい。ベリクリーデ!?」

ベリクリーデは、窓を開けようと小走りで向かった。

馬鹿かこいつ。幽霊を自ら誘き寄せるような真似を。