神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「悲しい事件だったね…あれは…」

「…そうですね…。俺達、今あそこに…」

「さびしいもんだよねぇ。あの後、誰も住む人がいなくなっちゃって…」

…え?

「周りにはアパートが建ったりしたけど…未だにあの場所は…草がぼうぼう生えて、野良猫の溜まり場になってねぇ…」

「…はい?」

ちょっと待て。それどういうことだ?

周りにアパートって…いや、アパートが建ったのは、心中事件の跡地だろ?

「住所…そう、住所が。あの事件の跡地にアパートが…」

「…あぁ、この辺ね、10年前に住所が少し変わったのよ」

狼狽える俺に、花束にリボンを巻きながら、中年女性店員が教えてくれた。

…住所が、変わった?

「国の土地整理でね。その心中事件が起きたっていうのは、もう何十年も前でしょ?だから昔の住所なんだと思うわ」

「…!」

「例の事件があった場所は、今は空き地になってるのよ。まぁ、あんなことがあった土地じゃ、誰も住みたくないわよねぇ」

「…」

俺とベリクリーデは、互いに顔を見合わせた。

お互いに。きょとんとして。

…いや、ベリクリーデは大体、いつもこんな間抜けな顔してるけども。

「はい、花束出来たわよ」

「あ?あ、はい…。どうも…」

「毎度あり〜」

代金を払って、俺は放心状態で花屋を出た。

…なぁ。

…俺、一体何を信じれば良いんだ?