神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…翌日。





今日も俺は、自室にこもって仕事をしていたのだが。

そこに、

「じゅーりーすー」

「…来やがった…」

またしても。またしても奴が。

ノックもせずに、俺の部屋にやって来た。

しかも、今日は。

「あのねー、ジュリス。あそぼ」

「遊ばねーよ…。…また着せ替え人形か?」

「ううん。今日はビーズ」

「…あ、そう…」

ベリクリーデが持ってきたのは、いかにも小さな女の子が好きそうな。

いろいろな色があって、キラキラしているビーズのセット。

あるよな、こういうの。子供用の玩具で。

子供でも簡単にネックレスやブレスレットが作れるっていう、アレだよ。

…お前、幼稚園児か?

何でも良いけど、俺はお前と楽しくビーズごっこしてる暇はない。

「良いか、ベリクリーデ。仕事をしろ」

「ほぇ?」

ほぇ、じゃないんだよ。お得意の口癖で誤魔化そうとするな。

「人様の役に立つことをしろって、昨日言っただろ?」

「うん。だからすずめ捕まえようとしたのに、ジュリスが駄目だって」

そうだった。

違うんだよ、ベリクリーデ…。そういうことじゃなくてな…。…そういうことじゃないんだよ。

分かってもらえないだろうか…。

「…あのな、お前は…そう、頑張り方がズレてるんだよ」

「…??」

「とにかく…料理。料理には関わるな。お前は不器用だから、料理には向いてない」

「えっ?得意分野だと思ってたんだけどなー」

何の冗談だ?

「料理以外で、人の役に立つことをしてこい。分かったか?」

「うん、分かったー」

よし。

ベリクリーデは素直に頷いて、とてとてと俺の部屋を出ていった。

これで、少しは大人しくなるな。

あと、ビーズセットは持って帰れよ。何で俺の部屋に置きっぱなしなんだ?