神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…翌日。

俺とベリクリーデは、早速、近所の花屋に向かった。

「おはようございます」

「…?あら、お客さん?」

花屋のおばさんは、店先のプランターに水をやっているところだった。

「はい。ちょっと…花束を作って欲しくて」

「あぁ、そう…。結婚式?それともプレゼント?」

「あ、いえ…。お供え花束です」

「あら、そうだったのね。分かったわ。…じゃ、白とグリーンでまとめた方が良いかしら…」

などと言いながら、エプロンをつけた中年女性店員は、水をやるのをやめて立ち上がった。

「どうぞ、お店の中で待っててくださいな」

「あ、はい。ありがとうございます」

俺とベリクリーデは、小さな店舗の中に招き入れられた。

予算を伝えると、店員さんは花を選んで包んでくれた。

花束が完成するのを待っている間。

「わー。お花、綺麗だねー」

「こら、勝手に触るなよ」

店舗の中には、ケースに入れられたたくさんの、色とりどりの花が陳列されていた。

ベリクリーデ、興味津々。

…すると。

「…お客さん、誰か亡くなったのかね」

「えっ?」

背後から声をかけられて、振り向くと。

そこには、小さな丸椅子に座った、腰の曲がったおばあちゃんが。

…誰だ?

「あー、ちょっとおばあちゃん。今お客さんいるから、向こうに戻ってて」

花束を作りながら、中年女性店員が大きな声で言った。

あの女性店員にとって、おばあちゃん…ってことは。

あの女性店員の母親か…それとも、義理の母親か。

「あ、いえ。大丈夫です…。…あの、おばあさん、ここの店員さんですか」

「あの子は二代目。亡くなったわたしの主人が一代目なの」

と、おばあちゃんが教えてくれた。

成程。先代店主…の、奥さんだったんだな。

「そうですか。長く続いてるお店なんですね」

そう褒めると、おばあちゃんははにかむように微笑んだ。

愛想の良いおばあちゃんである。

「それでお客さん…。まだお若いのに、誰か亡くしたのかね」

「あ…いえ…」

俺達がお供え用の花束を作ってもらっているのを見て、俺達の知り合いの誰かが亡くなったのだと勘違いしたらしい。

そうじゃないんだが…。

「…違うんです。知り合いじゃないんですけど…供養の為に…花束を供えようと思って」

「そうかい」

…そうだ。

このおばあちゃん、先代の時代からここで花屋を営んでたんだよな?

それなら…かつてこの近くで起きた悲劇のことを、知っているかもしれない。

尋ねてみる価値はある。

「あの…おばあさん。この近くで、昔、心中事件が起きたのを知ってますか?」

「…心中事件?」

「はい。親子4人が心中して…家にガソリンを撒いて…」

「…あぁ…。…あったね、そんなこと…」

…やっぱり。知っていた。