神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

なんて悲惨な事件なんだ。

こんなことになる前に、せめて誰か、この家族に手を差し伸べられなかったのか…そう思えてならない。

凄惨な気分にさせられると同時に、俺はとあることに気づいて、そして絶望した。

「…!これ…」

「…?ジュリス、どうしたの?」

「…住所…」

「ほぇ?」

住所だ。

この心中事件が起きた、一軒家の住所は。

今、『コーポ シューティング・スター』が建っている場所の住所と、まったく同じなのだ。

あぁ…成程、そういうこと…。

納得したよ。…全部。

「そうか…。…この事件が起きた後、ここに…」

一軒家は燃え尽き、以前この土地に住んでいた家族は、亡き者にされた。

家の残骸を取り払って、このアパートが建設され。

そして今、俺達はここに住んでいる。

…そういうことなんだ。

「…ベリクリーデ」

「?なーに?」

「明日、一緒に花、買ってこような」

「お花?」

「あぁ。この近くに、花屋があったろう?」

そこで花を買ってきて、供えよう。

それから、子供が好きな玩具や…お菓子、それにお水も。

きっと、凄く暑くて…喉が渇いていただろうから。

そして何より…線香を。

今更、俺達に出来ることと言えば、それくらいしかなかった。










…その日の晩も、ミシッ、ミシッという足音や。

台所のシンクから、ぴちょんぴちょんと水滴が溢れる音がした。

しかし、俺は昨日ほど恐れなかった。

相変わらず、ベリクリーデは何も気にせず爆睡してるし。

それに何より、幽霊の正体が分かれば、恐ろしさも半減するというものだ。