神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺はリビングに座って、コピーした新聞記事を読んだ。

ベリクリーデも、俺の横にちょこんと座って、横から新聞記事をじーっと見つめていた。

図書館の司書さんは、近隣で起きた火災事件や、心中事件について取り上げた記事を印刷してくれていた。

この中から、『コーポ シューティング・スター』と関係ありそうな記事を絞っていこう。

まず一つ目は…。

「えぇと、まずは…。…あわや山火事…消防隊が消火作業…」

「ほぇー」

どうやら、山火事騒ぎの記事らしいな。

記事によると、無許可で野焼きをしていたおじいさんが、危うく近くの山まで燃やしてしまうところだったらしい。

そりゃ大変だ。駄目だぞ野焼きは。

これはこれで大変な事件だが、しかし『コーポ シューティング・スター』とは関係なさそうだ。

はい、次。

「どれどれ…。40代男性が重体、家庭内トラブルが原因か…」

「ほぇー」

記事によると、20年ほど前、この近くに住んでいた夫婦が。

酷い夫婦喧嘩の末、ついには奥さんが包丁を持ち出し、夫の脇腹をこう…グサッと…やってしまったらしい。

当然逮捕された奥さんは、しかし、まったく反省の色がなかったらしい。

というのもこの旦那、妻の目を盗んで、酒だ、博打だ、煙草だ、女だと、やりたい放題。

奥さんが再三注意しても、好き勝手をやめなかったそうだ。

それで、こんな狂気の犯行に及んでしまったと…。

とはいえ、これはあくまで未遂事件。

旦那さんは酷い傷を負ったが、命に別状はなかったそうだ。

…じゃ、このアパートとも関係なさそうだな。

「それから…こっちは、50代男性が自殺未遂事件…」

「ほぇー」

「こっちは、子供がマッチで遊んでてボヤ騒ぎ…」

「ほぇー」

次々と新聞記事を読み漁るが、それっぽい記述が見つからない。

もっとこう…決定的な情報はないものか。

すると。

「ねぇジュリス、こっちは?」

と言って、ベリクリーデは小さな新聞記事をこちらに差し出した。

「ん?あぁ…。えぇと…『一軒家で親子4人が心中事件』…!?」

これだ。

俺は目の色を変えて、その小さな新聞記事を食い入るように見つめた。

「ベリクリーデ、お前、でかした」

「えへへー」

よくやった。相変わらず、直感だけは頼りになるヤツだ。

えぇと…。新聞記事によると、何十年も前、親子4人が生活苦の末、心中事件を起こしたらしい。

夫婦二人と、子供が二人。

子供は双子で、まだ2歳だったらしい。

きっかけは、旦那さんが勤めていた会社をクビになって、収入が途絶えてしまったこと。

更に、奥さんは産後の肥立ちが悪く、働ける状態ではなかった。

家賃を払うことも、子供や奥さんの病院代を払うことも出来ず。

周囲に頼れる人もいなくて、将来に絶望した夫婦はついに、深夜に子供を絞め殺し。

夫婦共に、首を吊って亡くなった。

その時に、部屋にガソリンを撒いてマッチを投げ。

賃貸住宅だった一軒家ごと、家族は炎に包まれた…。

…というのが、新聞記事の内容だった。