神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「段々疲れた顔になっていってねぇ。可哀想でしょ?だからあたし、聞いてみたのよ」

「聞いてみた?…何をですか?」

「大丈夫なの、何か悩み事でもあるの?って。そうしたら…部屋で変なことが起きる、って言うのよ」

「…!」

…来た。

それこそ、俺達が今求めている情報。

「それまでは何ともなかったのよ?それなのに、突然…。日に日に顔色が悪くなっていって…。結局、出て行っちゃったわ。お母さんが迎えに来たんですってねぇ」

「…そうなんですか…。…でも、どうしてあの部屋だけ…?他の部屋は?」

「さぁ?少なくとも、ウチは何ともないんだけどねぇ」

…そうなんだ。

「あの…つかぬことをお聞きするんですが、あの部屋って…昔、何か曰くがあったとか…そういうことは…」

「あのねぇ、ここだけの話なんだけど」

と、スナックのおばさんは声を潜めた。

そして、俺達に耳寄り情報を教えてくれた。

「このアパートが建つ前に、ここで火事があったんですって」

「か…火事?」

「そう。一家心中だったんですって」

「…一家心中…」

…それじゃ、まさか。

204号室で起きている…あの不可思議な現象は。

「怖いわよねぇ。まさかとは思うけど…」

「…」

「あらやだ、あたしったらつい喋り過ぎちゃったわ」

おばさんは、腕時計を見ながら言った。

「そろそろ出勤の用意をしなきゃ。それじゃ、お宅も気を付けてねぇ」

「は、はい…」

語尾を伸ばす、独特の癖をお持ちのスナックおばさんは。

意味深な笑顔で手を振り、自宅である104号室に戻っていった。

「…」

「…」

俺とベリクリーデは、互いの顔を見合わせた。

不動産屋で手に入らなかった貴重な情報を、こんな形で入手することになるとは。

ようやく俺達にも、ツキが回ってきたということなのだろうか。