神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「ふー…。結局、手ぶらか…。上手く行かないもんだな…」

意気揚々と、情報収集の為に不動産屋まで出かけていったのに。

結局、何も得られずにすごすごと退散しているんじゃ…。

…それなのに。

「おばけー♪おばけー♪おばおばけー♪」

「…お前は元気だな…」

昨日の夜の現象も、さっきの不動産屋での空振りも、全然気にしていないベリクリーデ。

羨ましい能天気ぶりだ。

「ジュリスは元気じゃないの?」

「え?いや…。元気じゃないってことはないが…」

「ジュリスの〜元気スイッチは〜、何処かな〜♪」

「ちょ、やめろって」

ベリクリーデは妙な自作の歌を歌いながら、俺の背中や腕や腰を、指でツンツン押してきた。

何をアホなことしてんだ。

…でも、この下らなさ。

「はぁ…。お前は変わらないな…」

「ふぇ?」

「いや…良いよ。お陰で、少し元気出た」

案外、ベリクリーデが今回の任務に同行してくれて、助かったかもな。

程よく肩の力を抜くことに関しては、ベリクリーデの右に出る者はいない。

「そっかー。良かったー」

「あぁ。諦めるのはまだ早い。一旦部屋に戻ってから、今度は商店街で聞き込みを…」

と言いながら、『コーポ シューティング・スター』に戻ってきた俺達に。

意外な人物が、声をかけてきた。

「あら?…あらあらあら?ねぇ、ちょっと」

「はい?」

突然、知らないおばさんが話しかけてきた。

やたらと派手なワンピースを身に纏い、明るく染めた髪を一つに結い上げた中年女性である。

「ちょっとちょっと、あなた達。もしかして204号室の人?」

「え?あ、そうですけど…。あの、どちら様で…?」

「やぁねぇ。あたし、一階の住人よ。104号室。あなた達の真下に住んでるの」

「あ…そ、そうだったんですか」

そういや、下の階の住人もいたんだっけ。

盲点だった。灯台下暗し。

二階の住人からは、全然有益な情報を得られなかったから。

もう、『コーポ シューティング・スター』の住人から情報を得ることは諦めていた。

しかし、このおばさんは…。

「若い人が入ったって聞いたから、どんな人達なのかしら、って思ってたのよ。まぁ、若いわねぇ」

「ど、どうも…」

見た目は若者に見えるかもしれないが、俺、あんたより確実に年上だぞ。

まぁ良い。そう思わせておこう。

「前住んでた人もね、若い人が入ってたのよ?でも、その人結局出て行っちゃって…」

「…!」

…この人。まさか。

あれか?アパートに一人二人はいる、噂好きおばちゃん的な…?

だとしたら、情報を得られる可能性が高い。