神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「ベリクリーデ、お前…。昨日、何かいなかった?って聞いたよな?」

「ふぇ?そうだっけ?」

本当に忘れてんのかよ。

あの後、びびりまくって一睡も出来なかった自分が余計に情けなくなる。

「本当に誰かいたのか?見たのか」

「…?」

「何がいたんだ?髪の長い女とか?ボロボロの服を着た老婆とか?落ち武者とか?」

「ジュリスしかいなかったよ?」

…だ、そうだ。

つまりベリクリーデも、何者かの気配は感じたけれど。

姿は見なかった、あるいは見えなかったという訳か。

畜生…。どうせなら、姿も見せろよ。

あるいは…部屋の中が暗くて見えなかっただけ、という可能性もあるが。

「視線を感じたのか?それとも気配?」

「うーん…。…どっちも」

…成程。

ベリクリーデがそう言うのなら、確かに「居た」のだろう。

「一人だけか?それとも、他に何人かいた?」

「一人だけじゃないかなぁ」

「そうか…」

恐らく、そいつが足音の正体なんだろうな。

そして、シンクの蛇口から溢れていた水滴も…。

…ったく、幽霊って奴は。

そうやって地味な嫌がらせばっかりして、俺達を怖がらせようとしてるだろう。

以前の住人が精神を病んだ理由が、ちょっと分かった気がした。

そして、この部屋が紛うことなき、事故物件であることも。

こうなったら、徹底的に調べ、幽霊の正体を探ってやる。

そうでもしなきゃ、溜飲が下がらないというものだ。