神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

そんな…そんな悲惨なことがあるだろうか。

それなのにベルーシャは、少しも自分の運命を悲観したりしなかった。

「ありがとう、クロティルダ。私の傍に居てくれて。私の名前を呼んでくれて。私のこと…ずっと忘れないって、約束してくれて」

「…ベルーシャ…」

そのくらい…俺は、いつでも…。

「それにね、私は消えたりしない。この世界をずっと見てるから。世界の行く末を」

世界の行く末。

ベルーシャが死に…人類が滅び、世界が崩壊したその先。

ベルーシャは、その未来を見ていた。

「きっとこの世界は、いつか素晴らしい世界になる。私はそれをずっと見てるんだ。…クロティルダと一緒に」

「…」

「私の犠牲は無駄じゃない。世界の犠牲は無駄じゃない。私が…この命をもって、そのことを証明してみせるから」

…そんな世界が。

本当に待っているのだろうか。

今の俺には、まだそんな未来のイメージは見えなかった。

天使の俺でさえ、そうなのに。

ベルーシャは人間だが、俺よりずっと先を見ていた。

その先の未来に、ベルーシャはいる。

「いつか…私は新しい世界に、また生まれ変わるから。その時は…クロティルダが、私に命を与えてくれる?」

「…分かった。約束しよう」

「…ありがとう」

命を与えること。

これが、俺の役目なのだから。

ベルーシャの為なら…何度でも。

「必ず、また君に会いに来る。だから、それまで…。…それまでには、きっと…」




「…時間だ」



聖神ルデスが、無情にそう告げた。