神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

俺はそのまま、しばし無言で虚空を見つめた。

死刑宣告を受けた時…というのは、こんな気分なんだろうな。

…何を知った風なことを。

死刑宣告を受けたのは俺ではなく、ベルーシャだ。

俺は迷った。ベルーシャに、そのことを伝えるべきかどうか。

自分が明日死ぬなんて、出来れば知りたくないんじゃないかと思って。

人生最後の数時間を、恐怖の中に過ごして欲しくなかった。

死ぬ時は、せめて…恐怖を感じないまま、ひと思いに終わらせてやりたかった。

…だけど。

そんな訳にはいかなかった。自らの死期を知るのは、人の権利だ。

ひと思いに…なんていうのは、俺の我儘だ。

俺が罪悪感を感じたくないばかりに、最後の瞬間を先延ばしにしようとしているに過ぎない。

だから、俺はベルーシャにそのことを伝えに行った。






「…ベルーシャ」

「あ、くろてぃる。良いところに」

ベルーシャは俺を見て、ぱっと美しい笑顔を見せた。

…この笑顔が見られるのも、明日まで。

「あのね、くろてぃる。私、新しい魔法を…」

「生贄の儀が、明日執り行われることになった」

「…」

「…つまり、お前の命は…明日、終わる」

…あぁ、言ってしまった。

だが、後悔はなかった。

ベルーシャが泣き喚き、叫び、詰り、俺を殴りつけたとしても…後悔はなかった。

ただ、胸が苦しかった。

自分でも、どうしてなのか分からない。

だけど…どうしても、胸が苦しくて堪らなかった。