神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…一波乱があった、その翌日。の、朝。






「ふわぁぁ〜…。よく寝た…」

「…」

俺が起こさないでいると、ベリクリーデは午前9時くらいまでぐっすり寝ていて。

ようやく目を覚ましたベリクリーデは、いかにも気持ちの良い朝、と言わんばかりに。

両手を豪快に伸ばして、大あくび。

その横で、俺が額を押さえて俯いているというのに。

「…あれ?ジュリス、どうしたの?」

そんなベリクリーデが、ようやく俺に気づいた。

「あれー?あれー?ジュリス、もしもーし。元気ですかー?」

「…」

「…ジュリスが石みたいになっちゃった…。見たら石になるおばけを見ちゃったのかな…」

「…」

「あのおばけ、なんて言うんだっけ…。…メリッサ?」

「…メデューサだろ…」

無視出来ずに、ツッコミを入れてしまった。

ベリクリーデがアホなこと言ってるから…仕方なく。

「あ、ジュリスがお返事してくれた」

「…うん…」

「おはよー、ジュリス」

「…おはよう」

俺は、どうしてお前がそんな満面の笑みで朝を迎えているのか分からないよ。

いや、俺だってさ、ある程度のことは覚悟してたよ?

自ら事故物件に住むことを選んだんだ。そりゃ覚悟はしてるさ。

…だけどさ。

昨夜のアレ…あんなことがあったら。

さすがに俺だって、結構ショックを受けるよ。

俺だって人の子だからな。

ベリクリーデみたいに、けろっとしていられたら良かったのに…。

…畜生。なんか腹立ってきた。

何に腹が立つって、自分に。

ベリクリーデがけろっとしてんのに、自分だけ怖気づいて、まだ見ぬ幽霊にびびってるなんて。

自分の情けなさと不甲斐なさに、苛立ってきた。

「あと、お前が平気なのに俺だけ狼狽えてる、って状況にムカつく」

「ほぇ?」

首を傾げるんじゃない。

「男の癖に、ダサw」と、笑いたきゃ笑ってくれても良いぞ。

男だろうと女だろうと、幽霊は怖い。当たり前だろ。

…とはいえ。

いっそ出てきてくれた方が良い、と言ったのは俺なんだ。

頼み通り出てきてくれたのだから、俺だっていつまでもビビっている訳にはいかなかった。

「なぁ、ベリクリーデ」

「なーに?」

「昨日の…その、夜のことなんだけど…」

「…??」

おい。もう忘れてるんじゃないだろうな。