神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

ゴールにしていた孤島が近づいてきて、私は振り向いた。

「はぁ、はぁ。ここまで来れば、私の勝ち…って、えぇっ!?」

「誰の勝ちだって?」

気がつくと、私の目の前にクロティルダがいた。

…あー…。…うん…。

「…ごめんなさい。勝てると思ってました」

「そうか」

ここは、素直に謝っておくが吉。

うーん…。負けちゃったか。

いっせーの、でスタートしたら、さすがに勝てなくても。

フライングすれば、勝てるかなと思ったんだけどなぁ。

そんなに甘くなかった。

…って言うかクロティルダ、ちょっと大人げないんじゃない?

「負けてくれても良いのにー…」

「…気を遣われた方が良かったか?」

「まぁ、別に良いけど…」

勝てない勝負を仕掛けた私が悪かった。反省します。

…次は勝とう。

「それよりも、ベルルシア」

「何?」

「何故、ゴールにこの島を選んだ?」

…え?

私は、眼下に見える孤島を見下ろした。

…うわぁ。

遠くに島らしきものが見えたから、ここをゴールに定めただけだけど。

この島…こうして近くまで来てみると。

「見て、クロティルダ…。水上都市だ」

「…あぁ、そうだな」

海のど真ん中に、都市がある。

そんな景色を見たことがあるだろうか。

話には聞いていたけれど、実際に見るのは初めてだった。

世界には、このような水上都市が各地にある。

大きな川や、海の真ん中に都市を作るのだ。

この水上都市は、人類の叡智の結晶に他ならない。

「クロティルダ…。どうして、海の真ん中に都市があるのか、知ってる?」

「あぁ。世界的な人口増加により、人の居住区が狭まった結果…人間は、海の上に都市を作ることを思いついたのだろう」

「うん、そう」

無論言うまでもなく、海の上に都市を作るなんて簡単なことではない。

だけど、魔導科学が発展した現代なら、それも可能だ。

魔法の力で、海の上に陸地を作り。

魔法の力で、移住者をこの都市に送り。

魔法の力で、都市を発展させてきた。

全ては、人類が生み出した魔法の賜物だ。

「凄い…。…綺麗だね」

こうして上空から見下ろすと、この水上都市は本当に美しい。

水上都市は、陸地の人間の文化とは異なる、独自の文化発展を遂げている。

大きな高層ビルのような建物から、古いピラミッドのような建物まで。

様々な文化的、そして歴史的な建造物が建設されている。

人間は人間の力で、ここまでのものを作り上げた。

そう思うと、私も一人の人間として、人類の叡智の進歩を誇りたい気分だったが…。

「…」

クロティルダは、険しい顔をして水上都市を見下ろしていた。