神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…久し振りに、中庭以外の場所で外に出たような気がする。

空気が美味しい。

「さぁ、何処に行く?」

クロティルダが、私の後ろに続いて出てきた。

…。

「…そういえば、クロティルダは私を外に出して良かったの?」

「ん?」

「みすみす私を外に出したら、逃げ出すかもしれないよ」

生贄にされるなんて嫌だ。家族を殺した人と一緒にいるなんて嫌だ、って。

私が逃げ出したら、クロティルダは困るのでは?

「そんな心配は特にしていないが…。…それに、お前にそんな気はないだろう?」

「まぁ…。…ないけど」

「仮に逃げたとしても、この世の何処にでも追っていけるしな」

あ、そっか。そうだね。

私が何処に逃げたとしても、クロティルダはこの天界から、いつでも私の居場所を探し出せるのだ。

「とはいえ、逃げる者を追うのは忍びない。出来れば逃げないでくれ」

「大丈夫だよ。逃げるつもりないから」

「そうか」

逃げたところで、行く宛もないしね。

ちょっと言ってみただけだよ。

それで…何処に行くのか、だっけ。

何処が良いかなぁ…。

…そうだ。

「クロティルダ、私…海を見に行きたい」

「海?」

「うん」

今度の夏休みは、家族みんなで海に行こう。

両親とそんな約束をしていたことを思い出したのだ。

…もう、その約束は二度と叶わないけど。

ならせめて、私一人だけでも。

「分かった。行こう」

やった。

「地上に降りる。…掴まっていろ」

クロティルダは、私の手をしっかりと握り。

そして、大きな天使の羽根を広げ、天界から降り立った。