神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

もう、学校に行く必要はなかった。

必要なことは全部、クロティルダが教えてくれた。

クロティルダは、優秀な指導者だった。…天使なのに。

学校の先生より、ずっと分かりやすかったくらいだ。

…いや、それは違うかな。

クロティルダが優秀な先生なんじゃなくて…いや、確かに優秀なんだけど。

それ以上に私の方が、優秀な生徒になったのだ。

…ちょっと、自画自賛だね。

でも、自分で自分を褒めたくなるほどの進歩と成長だった。

これまで、学校でたくさんの魔導の授業を受けてきたけれど。

どんなに分かりやすく教えてもらっても、私はその全てを理解することが出来なかった。

頑張って理解しようとするんだけど、頭の中にモヤがかかったみたいに、分からなくなって。

頭の中がぐちゃぐちゃになって、混乱して、結局理解出来ない。

そんな自分を、酷くもどかしく思ったものだった。

何で私は、ここまで丁寧に教えられても理解出来ないんだって、自分を責めたことも何度もあった。

だけど、今の私はまるで違う。

以前の私とは、まったくの別人になったと言っても良い。

本来の才能を取り戻した私は、乾いたスポンジのように、クロティルダが教えてくれる知識を吸収していった。

以前は、説明されても分からなかったはずの内容が、今は分かる。スイスイ分かる。スラスラ分かる。スルスル分かる。

何で私、こんな簡単なことが分からなかったんだろう?って、過去の自分の理解力の無さに驚くほど。

これが、本来私が持っていた才能だったんだ。

本来の自分を取り戻すのは、本当の自分の才能を遺憾なく発揮するのは、素晴らしい感覚だった。

今の私を、学校のみんなにも見せてあげたい、と思ったくらいだ。

…残念ながら、それは出来ない相談だけど。

でも、自分の力を取り戻すことが出来た。

これだけでも、私はクロティルダに感謝していた。

…自分の家族を殺した人に感謝するなんて、おかしな話だ。

それに、この力は取り戻さない方が良かったのだということも、充分分かっている。

…だって私は、取り戻したこの力を、生贄として捧げる為に育てているのだ。

私は何も知らず、自分が落ちこぼれだと思い込んだまま、平凡な一生を過ごす方が良かったのだろう。

その方がずっと…幸せだったはずだ。

でも、私は本来の自分の力を取り戻したことを、後悔してはいなかった。

…本当のことを知らされずに、劣等感に苛まれながら長生きするよりも。

本当の自分の姿を知って、誇り高く早死する方が良い。

…そうは思わない?

だからこそ…私は、クロティルダを恨んでいなかった。

何度も言うように、決して、彼を恨む気にはなれなかったのだ。