神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

…ともかく。

「私はその人のお陰で、一命を取り留めたけど…。戻ってきた時には…今みたいに、ほとんど魔法が使えなくなっていたの」

私はもしかして、生きる為に自分の魔力と、生命力と…全ての魔導の才を捧げてしまったんだろうか?

…そんな風に考えたことはなかった。

ずっと…神様が助けてくれたんだと思ってたものだから。

「…成程な。なら…お前を連れ戻した『誰か』が、お前の持つ力を、才能を眠らせたのかもしれないな」

「え…」

「目を閉じてみろ」

クロティルダは私にそう言って、私の額に指を当てた。

「お前の中に眠る、お前の才能の全てを呼び起こす」

その瞬間。

私の額に当てたクロティルダの指が、ピカッ、と光って。

白い光が、私の身体を柔らかく包み込んだ。

途端に、身体の奥底から湧き上がるような、強い力…強い衝動を感じた。

失われていたモノを、取り戻したように。

ずっと眠っていたモノを、揺り起こしたように。

私の中に秘められていた「本当の私」が、目を覚ました。

「…これ…」

信じられない。

身体のうちから、魔力が溢れてくる。

無意識のうちに両手足に括り受けられていた鉛が、ようやく取り払れたような気分だ。

心も身体も解き放たれ、自由になった。

それなのに、何処か懐かしい感覚だった。

そうだ…これ、私の力だ。

生まれてきた時、私が確かに持っていたはずの力だ。

だから、こんなにも身体に馴染むのだ。

本来自分が持っていたものを…取り戻したのだから。

「…どうだ。思い出したか?」

「うん…。これ…私の力、だったんだ」

…神様が、私の力を持っていってしまったんだと思っていた。

でも、そうじゃなかったんだ。

私の力は、私の中にちゃんとあった。

長い間、ずっと眠っていただけだったんだ。

…クロティルダに「起こして」もらわなかったら、一生眠ったままだったかも。

とんでもないお寝坊さんだ。…我ながら。

…もっと早く、目を覚ましていれば。

私は…Sランクの学校で、ちゃんとやっていけただろうに…。

…ううん、今となっては、もうどうでも良いね。

私の力は、私の為ではなく。

生贄として、世界を分かつ為に使われる。

…ある意味では、一生眠ったままの方が幸せだったのかもしれない。