神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

クロティルダも、サイコロを投げて決めるんじゃなくて。

もう少し考えて、慎重に選べば良かったのに。

よりによって…私を選ぶなんて。

それは人選ミスというものだ。

「…Dランク?何だそれは」

「魔導適性のランク…。一番上はSランクで…。だけど、私は一番下の、Dランクなの」

これで分かったでしょ。

私は、みそっかす魔導師なの。

「優秀な魔導師が必要なら…私じゃなくて、妹を選べば良かったのに…」

あの子ならAランクだから、私なんかよりずっと優秀で、そして生贄に相応しかったはずだ。

それに…君が殺した、お母さんのお腹の中の子。

あの子はSランク適性だった。

「…そのランクというのは、どうやって決めているんだ?」

「え?それは…保有魔力の量とか…。魔導の才能とか…」

その人が魔導師として、どれほど優れているか。

それを示す指標として、D〜Sランクまで分類されているのだ。

「とにかく、私は一番下なの。…私は魔導師として、全然才能がないんだよ」

「ふむ…。…そうだったのか」

「…そうなの」

だから、私を選んじゃいけなかったんだよ。

私が生き残ったって…私は期待に応えられない。

いつだって私は…誰の期待にも応えられないのだ。

「…今からでも遅くない。優秀な魔導師が必要なら、私じゃなくて…」

私の同級生みたいな、将来有望なSランクの魔導適性を持つ人を選ぶべきだよ。

…しかし。

「どうやら、お前にそのランク付けをした人間の目は、節穴のようだな」

「…え」

「お前が優秀じゃない?才能がない?…何故そう思うんだ?」

え…それは、だって。

「自覚はないようだが、お前はあの家の中で、それどころか…周囲にいたどんな人間よりも、膨大な魔力を持っている」

「…っ?嘘よ、そんなはず…」

「才能という点では、お前は他の人間より頭一つ、どころか頭三つほど抜けているが…」

「…」

…嘘だ。そんなの。

「病院で…検査してもらったんだよ?私…Dランクだって診断されて…」

「なら、その診断が間違っているんだな」

ま…。間違ってるって。そんなはず。

いや…でも、待って。

私は、「あのこと」を思い出した。

「私…生まれる前は、それから生まれた後…1歳の時は、Sランクだって言われてたの」

「ふむ。お前の魔導の才ならば、妥当な診断だな」

「だけど…2歳の時に、大きな病気をして…」

私は、生死の境を彷徨った。

あの時私は…生きることを諦めようとして、あの世に行こうとして…。

だけど、「誰か」に手を引いてもらって…その人のお陰で、私は生きることを選んで、戻ってきた。

けれどその後、私は生まれつき持っていたはずの魔導の才を、ほとんど全て失っていたのだ。

「…死にかけて、お医者さんも匙を投げて…私も死のうのしてたけど、でもその時…私のことを、この世に連れ戻してくれた人がいるの」

「それは何者だ?」

「…分からない。優しい声だった。温かい手だった…。…でも、それ以外は思い出せないの」

あれが神様なんじゃないかって、私、ずっとそう考えていたけれど。

クロティルダの反応を見るに…あれは、神様じゃなかった?

私…一体、誰に、何に助けられたんだろう?