神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

「今すぐ私のこと殺して。生贄にして良いよ」

家族はみんな死んだのに、私だけいつまでも生きてちゃいけないでしょ。

家族の中で、一番の出来損ないの私が。

「…お前は、死ぬことが怖くないのか?」

クロティルダは、私にそう尋ねた。

…死ぬことが怖いか?

…うーん…。

「…どうなんだろう?正直、あまりよく分からないな」

「人間は大なり小なり、死を恐れるものだと思っていたが」

「それは、私が以前にも死にかけたことがあるから…」

2歳の時。重い病気になった時。

あの時、私は生きることを選んで、「こちら側」に戻ってきた。

でも、今度は戻らない。

あの時選ばなかった、全部諦めるという選択肢を選ぶ。

私にとって「死」というのは、そんな単純な問題だった。

それに…。

「人間なら、どうせいつかは死ぬんだから。怖がっても仕方ないよ」

「…成程。そういう考えもあるか」

強がってるだけなのだろうか。本当は怖いと思っているのだろうか?

…分からない。

だけど、私が本当に怖いのは…死ぬことじゃなくて…きっと…。

「だが、お前はまだ死なない」

「…え?」

私は、クロティルダの方を向いた。

クロティルダは、私をじっと見つめながら言った。

「まだ、生贄としての器が足りない。生贄として機能する為には、まだ成熟しなければ」

「せいじゅく…。…どうすれば良いの?」

「聖神ルデスは、世界を二つに分け、新しい世界の柱としてお前を捧げるつもりだ。お前には、新たな世界を創り上げる主軸として、滅ぼされる全ての命の受け皿として機能してもらう必要がある」

「…」

ごめん。全然分からない。

重要なことを説明してくれてるんだけど。

つまり、私は今すぐ死ぬんじゃないってこと?

「…それはどうすれば良いの?私はここで、何をすれば良いの」

「端的に言えば、お前は魔導師として、魔導の才を伸ばしてもらわなければならない」

「…」

魔導の才…。…私が?

「人々の生命の受け皿になる…。その為には、並みの魔導師では足りない。これから時間をかけて、魔導師として…」

「…それは無理だよ」

「…何?」

とんだ人違い、見当違いだ。

クロティルダが投げた賽の目、弱過ぎる。

「私に…魔導師としての才能を期待するのは間違いだよ」

「…何故?」

何故って…そんなの。

「だって…私は、Dランクなんだから…」

…まさか、こんなところまで来て、自分のコンプレックスを打ち明けることになるとは思わなかった。