神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

まさか、現実で天使に会うことが出来るとは…。

人生って分かんないものだね。

「…ねぇ、今何時なの?」

「ん?」

「私、いつからここにいるの?」

時間の感覚が一切失われているが。

多分、もう夜は明けているはずだ。

いつまでも私が起きてこないから、それどころか私が寝室から消えているから。

今頃お父さんとお母さんは、私の行方を探していることだろう。

「そろそろ帰らなきゃ。お父さんとお母さんが…」

「…その心配は必要ない」

え?

「お前の家族は死んだ。…お前以外、全員」

「…」

その時私は、どんな顔をしていただろう。

口をぽかんと開けて、きっと凄く間抜けな顔だったに違いない。

「…どうして?」

「俺が殺したからだ」

…それは理由になってない。

「そんなはず…。そんな…」

呆然と呟いて、そして思い出した。

私が、ここに連れてこられる直前。

部屋の中に…血の匂いが蔓延していた。

あれは…まさか。

「…信じられないか。無理もない…。ならば証拠を見せよう」

そう言って、クロティルダは私の前に、映像を見せた。

何もない空間に、突然スクリーン画面のように映し出したのだ。

これは…魔法?こんな魔法が…。

それよりも、このスクリーンに映し出されている映像。

それは、私のよく知る光景。

私の家の中だった。

見慣れたその部屋の中に、血溜まりが広がっていた。

そして、その血溜まりの真ん中に、誰かが倒れていた。

妹だ。…一緒に同じ部屋に寝ていた、私の妹。

その妹が、物言わぬ肉の塊になって倒れていた。

…やっぱり、そうだったんだ。

あの血の匂いは…妹のものだったんだ。

そして。

「これがお前の妹。それからこれが…お前の両親だ」

クロティルダは、スクリーンの映像を切り替えた。

今度は、両親の寝室の映像だった。

二人共、ベッドの上に倒れ込むように横になっていた。

眠っているだけ…ではないことは明らかだった。

ベッドの端から、お母さんの腕がだらりと垂れている。

お父さんの両目は見開かれていて、生気を失い、池の水のように濁っていた。

そして、白かったはずのシーツは、二人の血で真っ赤に染まっていた。

…二人共、もう息がないのは明らかだった。

…あぁ。

私は、気づいてしまった。

お母さんの傍らに、赤ん坊の死体が転がっていることに。

誰なのかなんて、言われなくても良かった。

…お母さんのお腹の中にいた、赤ん坊だ。

Sランクの魔導適性を持つと言われたはずの、私の姉弟…。

「…ちなみに、腹の子は男だったぞ」

クロティルダが、無情にそう告げた。

…そう。

じゃあ、あの子は私の弟だったんだ。

いや…弟、になるはずのモノだったんだ。

もう生きていないんだから、全ては後の祭りだった。