神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

私は再び、その人の顔をまじまじと見つめた。

…天使…。

「…神様じゃないの?天使?本当に天使なの?」

「あぁ」

「…へぇ…」

この人が…天使。

不思議なことに、私はそれほど驚かなかった。

自分でも、何故こんなに冷静でいられたのか分からない。

「…驚かないのか」

と、天使さんが聞いてきた。

え?…うーん、だって…。

「神様だっているんだから、天使がいたっておかしくないでしょ」

「成程、それもそうだな」

その天使さんが、私の目の前にいることは、ちょっとびっくりしたけどね。

でも、生きていればそういうことだってあるだろう。

何せ私は、死の淵から神様に連れ戻された人間なのだから。

「あなたの名前は?天使に名前って、あるの?」

「俺は“大天使アークエンジェル“第7位、サンダルフォンだ」

「…なんて呼べば良いの?」

サンダルフォンさん…って、名前、何だか長くて呼びにくいね。

「俺の名前はクロティルダだ」

「サンダルフォンさん、じゃないの?」

「それは役職名のようなものだ。俺個人としての呼び方は、クロティルダで良い」

「そっか…。クロティルダ…」

かっこいいけど、こっちもちょっと長いね。

クロティルダ…。…くろてぃる、なんてあだ名はどうだろう?

クロッティでも良いかな。

…それより、向こうが自己紹介してくれたのだから…。

「私の名前は、ベルルシア・アンジュリカって言うの」

私も自己紹介すべきだと思って、自ら名乗ったのだが。

「あぁ。それは知ってる」

…さすが天使様。

「なんだ…もう知ってたんだ」

「俺が生贄として選んだんだ。名前くらいは知っていて当然だろう」

「…そっか…」

…ん?生贄?

生贄って…どういう意味なんだろう?

いや、それよりも…まず。

「…ねぇ、くろてぃる」

「くろてぃる、って何だ?」

君の名前だよ。

「ここは何処なの?…私、どうしてのんなところにいるの?」

「…それを、今聞くのか?」

だって、今気になったから…。

私、自宅のベッドで寝ていたはずなのに。

気がついたら、まったく知らない場所にいて、知らない天使に自己紹介してる。

信じられないことが起こっている気がする。

これって、もしかして…。

「…私、夢を見てるの?ここは夢の中?」

だとしたら、私、凄くファンタジーな夢を見てるんだね。

しかし。

「夢ではない。…ここは現実だ」

とのこと。

「そうなんだ…。…だよね…」

だって、夢の中にしては意識がはっきりしてるから。

それでも一応、試しにと、ほっぺをつねってみた。

うん、ちゃんと痛い。

ってことは…ここは本当に、夢じゃない。現実なんだ。