神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

そのまま私は、一体どれほど長く眠っていたのだろう。

「…う…ん…」

気がつくと、私はまったく知らない場所に眠らされていた。

…ここは、何処なの?

私はベッドの上に寝かされていた。

天蓋付きの、広くて豪奢なベッドだった。

私はベッドに手をついて、よろよろと起き上がった。

…私、どれほど眠らされていたの?

時間の感覚はまったくなかった。

部屋の中には窓も時計もなく、現在の時間を推し量るものは何もなかった。

…ここは何処…?

気がつくと、私は自分の部屋で着ていたはずのパジャマ姿ではなくなっていた。

薄い銀色の、ナイトドレスのようなものを着せられていた。

…何?これ。

私…一体、何をされたんだろう…?

「ここは…なん、」

「…気がついたか」

えっ。

誰かの声がして、私は驚いて、声の方を向いた。

そこには、男の人が立っていた。

すらりと背が高くて、華奢な身体つきの青年が。

「…」

私は、初対面…の、はずのその人を、まじまじと見つめてしまった。

その人がかっこ良かったから?…じゃ、なくて。

その人の背中に、大きな翼が生えていたからだ。

…わー…。

「それ…。…本物、なの?」

「?…何が?」

「その羽根…」

コスプレ?コスプレ…とかじゃないよね?

「それとも、作り物なの?」

「…作り物かと聞かれても…。生まれた時から生えていたものだから、何と言って良いか分からないが」

「…へぇー…」

他に言うことはないのか、って思われそうだけど。

寝起きだからだろうか。今の私は、全然気にならなかった。

羽根、綺麗だなー。とか思ってた。呑気だね。

「…気になるなら、触ってみるか?」

「えっ、良いの?」

「別に良いが…。痛覚はあるから、出来れば引っ張ったり、引っ掻いたりはしないでくれ」

「うん、分かった」

私は、その人の羽根を触らせてもらった。

最初は恐る恐る、慣れた後はちょっと大胆に。

さわさわ、と触ってみた。

…ほぇー。

「本当だ…。本物みたい」

「…『みたい』じゃなくて、本当に本物なんだが」

「あ、そっか…そうだよね」

羽根が生えた人なんて、私、初めて見たよ。

世界って広いんだね。

それにしても、生まれつき羽根が生えているなんて…。

「…何だか、神様みたい」

私は、思ったことを素直に口にした。

…しかし。

「俺は神ではない」

彼は、静かにそう答えた。

あ、うん…。そう、だよね。

神様が、こうして人間の前に姿を現すはずがない。

「じゃあ、あなたは何?…人間なの?」

「俺は人間ではない。俺は…天使だ」

「ふーん、そっか。天使…」

…え、天使?