神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

お母さんが、そんな風に思っていたなんて。

初めてそのことを知って、そして同時に、私は絶望した。

だって…だって、そんな期待をされても…私には…。

…たかがDランク適性の私では、とてもその期待に応えることは出来ない。

「母さんの気持ちは分かる。俺だって…自分の子が研究を継いでくれたら、どんなに良いと思ってるか…」

…お父さんまで。

二人が私に、どれほど大きな期待をかけてくれていたか。

「だけど、ベルーシャには無理なんだ。あの子には出来ないんだよ」

そう言われた瞬間、私はその場に崩れ落ちそうになった。

両親にまで、「出来損ない」の烙印を押されたような気がして。

「ベルーシャの責任じゃない。あの子は精一杯頑張ってるよ。でも、これは才能の問題なんだから、どうしようもない。現実を受け入れないと」

「…えぇ…。…そうね」

「それに、俺達にはまだ…ベルーシャの妹もいるし、それにその子も」

ここからでは見えないけれど、多分お父さんは、お母さんのお腹を指差したのだろう。

「その子はSランク適性だ。きっとベルーシャより、それどころか、俺達より優秀な魔導師になれる」

「そうだと良いけど…。分からないわよ、またベルーシャみたいなことが…」

「あれは特例だ。こんなこと、そうそう起こらないよ」

…。

「だから、下の二人に期待しよう。ベルーシャはベルーシャなりに、自分の出来ることをするはずだよ」

「…それじゃ、やっぱりあの子は転校させるの?」

「その方が良いだろう。出来ないのに期待されても…あの子が苦しいだけだ。せめて、好きなようにのびのび生きさせてやろう」

「…。…分かったわ」

この瞬間。

お母さんは、私に期待することをやめてしまったのだ。

そして…お父さんも。

私に向かって、直接口にすることはなくても。

「あの子の好きなようにさせましょう。…そうすれば、神様が自分の力を持っていったなんて、変な作り話もやめるかもしれないし…」

「あぁ。自分のレベルに合う学校に行くようになれば、きっとあの子も正気に戻るさ」

「そうね。…そうしましょう」

お父さんは、私が正気を失っていると思っているのだ。

あぁ…なんてこと。

聞かなければ良かった。こんなこと、聞かなければ…。

「さぁ、そろそろ子供達が起きてくる時間だ。俺達も切り替えないと」

「そうね。…分かったわ」

「あの子がDランクの学校に転入出来るよう、学校に掛け合ってみるよ」

「ありがとう。…ベルーシャには、私から言っておくわね」

「あぁ、そうしてくれ」

話がまとまって、二人がソファから立ち上がる気配がした。

逃げなきゃ。早く。

私が立ち聞きしていたことを知られたら…。…今よりも、もっと悪いことになる。

何より、私が耐えられなかった。

今、両親の顔をまともに見てしまったら。

きっと…堪えようのない感情が溢れ出してしまうから。

感覚を失ったように動かない足を、無理矢理引き摺るようにして。

私は、音を立てないように階段を上がり、寝室に逃げ帰った。