神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

今夜はよく眠れる、と思ったけど。

不思議と、私は上手く眠れなかった。

浅い眠りの中で、ずっと夢を見ていた。

凄く不思議な夢。








「…人間は罪を犯した」

背中に、大きな翼が生えた人だった。

その神々しい誰かが、厳かに、同じく背中に羽根の生えた三人の人達に語りかけていた。

「人の身でありながら、神の座に触れようとした。…これは許されざる行為だ。よって、神罰を下さねばならない」

…しん、ばつ?

神罰って…一体、何のこと?

声を出したかったけれど、ただこの光景を眺めているだけで、まったく干渉することは出来なかった。

「…恐れながら、ルデス様」

跪いていた三人のうち一人が、ルデス様、とやらに意見した。

「どうかご容赦を。人類は、ルデス様の権威を忘れてしまっただけなのです。誰しも、一度は迷い、見失うことはあります。それこそ、あなた様がお創りになった、不完全な人類の在り方ではありませんか」

「…」

「どうか…彼らを、この世界を滅ぼすことだけは…。どうか彼らに情けを…」

「黙りなさい。…智天使ケルビム」

名を呼ばれたケルビムという女性が、びくっと身体を震わせた。

「問題は、人類が自らの過ちに気づいていないこと。そしてもっとも許されざることは…このままでは、人類は邪神イングレアの力に手を出すやもしれない」

「…それは…」

「そうなれば、今度こそ取り返しがつかない。より大きな破滅を防ぐ為に、今こそ、人類に裁きを下す」

「…」

ケルビムと呼ばれた女性は、悔しそうに、ぎゅっと唇を噛み締めていた。

一体、何がそんなに悔しいの。

あなた達は何の話をしているの。神罰って何?

何も分からないけれど、でも…何だか、見てはいけないものを見てしまったような。

…そして何だか、凄く嫌な予感がした。

ただの夢…の、はずなのに。

「ひいては、ケルビム。あなたの配下に生贄の裁定を命じる。生贄を選び、育て、捧げなさい」

「…分かり…ました」

酷く悔しそうに、ケルビムという女性は頷いた。

…ただの夢。そう、これはただの夢なのだ。

それなのに、どうしてか…私には、他人事には思えなかった。