神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

暗い室内に、重く響く足音。

…成程、これは不気味だな。

姿が見えないのが、余計始末に負えない。

無駄に想像を掻き立てられ、悪い方悪い方に考えてしまう。

しかも、その音は一箇所だけではなく、

ミシッ、ミシミシッ、とあちこちから、複数の足音が聞こえてきた。

…どうやら一人ではなく、お仲間を何人か連れてきたらしいな。

これは確かに不気味だ。

…すると、その時。

「うーん…。むにゃむにゃ、じゅりす〜…。それはだめ…」

呑気なベリクリーデが、呑気な寝言を言い出した。

おい。お前は毎回毎回、夢の中に俺を登場させるんじゃない。

「こら、ベリクリーデ。起きろ。何の夢を見てんだ」

「だめだよ…。…むり、一輪車で世界一周はむりだよー…」

「俺は何をしようとしてるんだよ…!?」

お前の夢の中で、俺はどういう扱いなわけ?

良いから。頼むから早く起きてくれ。俺が一輪車で世界一周に繰り出す前に。

乱暴にベリクリーデの肩を揺すると、ようやく。

「…ふぇー…?」

ぱちん、と目を開いた。

やっと起きた。

「あれ…。ジュリスだ…」

「まだ夜中で悪いんだが、起きろ。どうやらお客さんが来たようだぞ」

「ジュリス…。一輪車はやめよう?せめて三輪車…」

「世界一周の話はもう良いから!現実に戻ってこい」

「ほぇ?」

ベリクリーデが首を傾げた、その瞬間。

またしても、四方八方から、ミシッ…ミシッ…と不審な音が聞こえてきた。

「…ほぇー」

これには、ベリクリーデもびっくり。

「きっと、お砂糖に釣られて来てくれたんだね」

「それは…関係ないんじゃないか…?」

こうしている間にも、ミシッ、ミシッ、という音は続いている。

…音だけ、ってのもなかなか不気味だな。

「何処かな。おばけさん、出てきてー」

不気味な音にも恐れることなく。

ベリクリーデは、むしろ興味津々で部屋の中をうろうろ。

度胸あるな、お前。

「うーん…。何処から聞こえてるんだろう?」

「それは…」

…正直、それが分からなくて困ってる。

あちらこちらから聞こえる気がするんだ。

この部屋…の、何処かだと思うんだが…。

「バスルームにも押し入れにもいなかった。玄関にも…」

「…うーん…。…じゃあ上かな?」

「上?」

ベリクリーデは、天井を見上げた。

「いや…上はないだろ?このアパートに天井裏なんてものはないぞ」

人どころか、ネズミ一匹入り込めるスペースなどないはず。

幽霊がアパートの屋上にへばりついている姿を想像して、そのシュールさに思わず笑い出しそうになった。

笑ってる場合じゃないっての。

「そっかー…。おばけは気まぐれだね…」

「まぁ、お前ほどじゃないと思うが…」

「大丈夫。きっと悪いものじゃないよ。話せば分かるおばけだよ」

何処から出てくるんだ?その自信は。