神殺しのクロノスタシス〜外伝集〜

自分の家の中なのに、初めて来た場所のように、私はきょろきょろと研究室の中を見渡した。

…実際、この部屋に入れてもらうのは初めてだしね。

研究室の中には、いくつもの本や、ファイルや、写真のようなものがたくさん置いてあった。

それから…赤や紫や黄色や緑や、様々な色をした薬液を詰めた瓶が、所狭しと並べてある。

ピンク色をした肉の塊のようなものが、薬液に浸され、瓶詰めにされていた。

…うわぁ…。

「まぁ、適当に座ってくれ」

お父さんは、ソファの上にどっさり置かれていた本や書類を退かして、私に座るように促した。

けれど、私は棚に並んだ瓶詰めを見つめていた。

「お父さん…これ、何なの?」

魔法の授業の…教科書の挿絵に、これと似たようなものが描いてあった気がする。

同じ家に暮らしているけれど、私は、魔法の研究員をしているお父さんとお母さんが、一体どんな研究をしているのか知らない。

聞いたことはあるけど、「ベルーシャにはまだ分からないから」と言われ、はぐらかされてきた。

これって、もしかして…。

「それか?ベルーシャ…。何だと思う?」

「…竜の赤ちゃん、とか?」

私が当てずっぽうで物を言うと、お父さんは軽快に笑った。

「そうだな…。ベルーシャももう十歳だ。そろそろ教えても良いかもしれないな…」

お父さんはそう呟いてから。

瓶詰めにされた肉の塊を指差して、誇らしげにこう言った。

「これはな、ベルーシャ。神様だよ」

「えっ…?」

かみ、さま?

…この、ハムみたいな肉の塊が?

「…これが、神様?」

嘘でしょう?

だって、私の手を引いて現実の世界に引き戻してくれたのは。

こんな、瓶詰めされたハムみたいな人じゃなかったよ。

「そうだ。これが神様なんだよ」

「…信じられない」

「まぁ、そうかもな…。だけど本当のことだ。これは旧世代の神。それを魔導の力で再現したものなんだ」

「…」

…まさか。

魔法の力で…神様を作り出した、ってこと?